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日産「ゴーン神話」の終焉 最後のコストカットは妻?(上)
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2010年9月 1日 16:41

 役員報酬日本一で話題のカルロス・ゴーン日産自動車社長兼CEO(最高経営責任者)が、夫人のリタ・ゴーンさんと離婚協議に入っているようだ。日産自動車をV字回復させて「ゴーン神話」が生まれる一方、その手法は「カネになるところを残してほかは切り捨てる、ただのコストカッター」とも揶揄されてきた。そのゴーン氏が最後にナタを振るうのは、会社内ではなく家庭内。遠因はやはり、コストカットを旨とする夫人の、日本における事業失敗にありそうだ。

<黒船経営者の凋落>

 ゴーン氏は言うまでもなく、バブル崩壊後の日本に現れた"黒船経営者"のシンボル的存在。1999年当時、有利子負債2兆円の日産自動車(日産)がルノーの傘下に入ったとき、ルノーがCOO(最高責任執行役)として送り込んできたのがゴーン氏だ。仏タイヤメーカーのミシュラン出身の同氏が、ルノー再建のために上級副社長に迎えられたのが96年。赤字のルノーを黒字転換させて期待に応えたが、その手法は徹底的なリストラだったことから「コストカッター」の異名があった。
日産自動車 その名の通りに、日産でも矢継ぎ早な人員削減、工場閉鎖などを断行する一方、新車攻勢もかけて03年には有利子負債を完済するという離れ業を達成。「ゴーン神話」によってメディアの寵児になったのは、周知の通りである。しかし、退職を余儀なくされた社員や切られた下請け企業の怨嗟の声はともかく、その経営手法には「企業再建より自分が生き延びるための切り捨て経営」―すなわち欧米型の弱肉強食手法という批判もつきまとってきた。「コストカットなら誰でもできる。経営者としてのオリジナリティはどこにあるのか」と疑問を呈する声が少なくなかった。
 それを裏付けるように、2000年代後半から日産は再び低迷期に入り、ゴーン氏は「神話が生きているうちに日本を去るのでは」とも囁かれた。「フーガ」や「ムラーノ」などの新車攻勢も長続きせず、さしもの神話に翳りが見えていたのはたしか。05年には本社ルノーの会長兼CEOに就いていたこともあり、日産からは退く潮時とも見えたが、ゴーン氏は現在までなお踏み留まってきた。

<ゴーン氏離婚の伏線>

 すると出てきたのが、先の高額役員報酬リスト。ゴーン氏は約9億円(8億9,100万円)もの報酬を得ていたのが判明。それが妥当か否かの論議は別にして、「これなら日産社長の座にこだわるのは無理もない」と妙に納得させられる。そこにもたらされたのが、「日産内部でも知る人は限られているけれど、ゴーン夫妻がついに別れたようだ。正式に離婚成立しているかどうかは不明。なにしろあれだけの資産家だから離婚協議も大変でしょう」という、ゴーン氏周辺からの情報。信憑性が高いと判断できるのは、「ついに」で表されるように夫妻にはそうなってもおかしくない伏線があった。
 ゴーン氏はレバノン系ブラジル人で、リタさんはレバノン生まれ。2人はフランスで知り合って結婚し、1男3女をもうけた。一家はゴーン氏の日本赴任にともない、パリの本拠と同時に日本でも東京に居を構え、パリと東京を随時往来してきた。そんなゴーン家でリタさんも日本の生活に馴染み、独自の人脈も築いた結果だろう。自ら事業に乗り出したのが「ゴーン神話」絶頂の04年だった。
 リタさんの事業とはレバノン料理店経営である。レバノン料理は、「中華」「フレンチ」「トルコ料理」と並ぶ「世界四大料理(諸説あり)」の一つで、日本では馴染みがないのが動機だったという。『マイ・レバノン』と名付けられた店は、東京渋谷区の東急東横線代官山駅からは3分だが、JR恵比寿駅からは7~8分かかるマンションの地下1階と利便性にはやや欠けるところ。それでもレバノン料理の珍しさに加え、やはり「ゴーン夫人の店」としてマスコミやインターネットを通じて知名度が広まり、リタさん本人が当時のメディアの取材に「開店資金は半年で回収」と答えているほど。
 リタさんは勢いに乗じて06年には港区元麻布の住宅街にカフェスタイルの2号店を出店する一方、『ゴーン家の家訓』(集英社)なる著書も出し、婦人誌でもレバノン料理の講習を連載。夫に翳りが見え始めているのに反して、傍目に夫人は絶好調に映っていた。

(つづく)

恩田 勝亘【おんだ・かつのぶ】
1943年生まれ。67年より女性誌や雑誌のライター。71年より『週刊現代』記者として長年スクープを連発。2007年からはフリーに転じ、政治・経済・社会問題とテーマは幅広い。チェルノブイリ原子力発電所現地特派員レポートなどで健筆を振るっている。著書に『東京電力・帝国の暗黒』(七つ森書館)、『原発に子孫の命は売れない―舛倉隆と棚塩原発反対同盟23年の闘い』(七つ森書館)、『仏教の格言』(KKベストセラーズ)、『日本に君臨するもの』(主婦の友社―共著)など。


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