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50億円資産めぐる遺言状真贋裁判―業界、地域名士が渦中に(上)
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2011年1月12日 13:03

 菅内閣が閣議決定した2011年度税制大綱は、「ツジツマ合わせ」「場当たり的」と総じて不評だが、特徴は「取れるところから取れ」の発想。是非はともかく、主たるターゲットになっているのは相続税。折しも未上場ながら業界大手の経営者一族の間で、遺言書の真贋をめぐる裁判が始まる。結果次第で数十億円単位の遺産の行方、さらには相続税問題も再燃するだけに裁判の行方が注目される。

 2010年11月下旬、岡山地裁倉敷支部に「遺言無効等確認請求事件」という民事訴訟が起こされた。遺産相続に関わる遺言が有効か否かを争うもので、原告は1人で被告が4人。双方ともに兄弟姉妹関係にあることが氏名でわかる。相続問題が裁判になることは珍しくもないが、その決め手となる遺言自体の真贋、それを争う当事者が業界、地域の著名人であれば注目度は違う。

 法廷で対峙するのは、岡山県に本社を置く食品容器製造メーカー大手の経営者一族。一族とは創業者夫妻の子供4人。男、男、女、男の3男1女だが、兄姉を訴えたのが三男で末弟のT氏。裁判では姉の義弟も被告になっている。経緯を追うとミステリー性もたっぷりだ。

 まず創業者没後、同社は現在まで次男が経営を引き継ぎ、一時はT氏経営の販売会社が営業網を拡げながら業界トップにも立っていた。ところが7~8年前から次男とT氏の関係が悪化し、二人三脚体制も壊れて両者は袂を分かっている。

 関係悪化にトドメをさしたのが相続問題だ。6年前に創業者の妻、すなわち兄姉の母親が91歳の高齢で亡くなり、その遺言で遺産分割された。内容は、母親名義の預金を4人で均等に分割相続するという簡単なもの。周知のように、遺言状は最新のものが有効となるため、亡くなる前年の03年8月29日付けのそれが次男の弁護士の手で裁判所で検認され、そのまま執行された。

 ところがそれに不審を抱いたのがT氏である。

 「母は02年9月に執行者として東京の弁護士も指定して、相続の仕方を細かく指示した『遺言書』を遺していました。こちらが本来の遺書で03年のそれは明らかに偽造されたものです」ということで、これまでそれを論証すべく準備を重ね、今回提訴したもの。

 したがって原告はT氏で、被告は長男、次男、姉に加え、姉の夫の弟、すなわち姉の義弟で元A社社員の4人。「長男はもともと会社経営にも相続にも関心がないけれど、偽造された遺言状にしたがって相続している関係上、名前をあげたもの」というように、T氏のターゲットはもっぱら次男以下の3人だ。

(つづく)

恩田 勝亘【おんだ・かつのぶ】
1943年生まれ。67年より女性誌や雑誌のライター。71年より『週刊現代』記者として長年スクープを連発。2007年からはフリーに転じ、政治・経済・社会問題とテーマは幅広い。チェルノブイリ原子力発電所現地特派員レポートなどで健筆を振るっている。著書に『東京電力・帝国の暗黒』(七つ森書館)、『原発に子孫の命は売れない―舛倉隆と棚塩原発反対同盟23年の闘い』(七つ森書館)、『仏教の格言』(KKベストセラーズ)、『日本に君臨するもの』(主婦の友社―共著)など。

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