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行政

説明責任としての情報公開制度~福岡市・行政改革の実態(20)
行政
2011年2月 7日 07:00

 国民主権に基づく「信託」という考え方に基づけば、「行政機関が保有する情報は、そもそも市民の財産であるが、市民の信託を受けて行政機関が保有している」ということになります。そして、「行政の説明責任(アカウンタビリティ)」は「市民から厳粛な信託を受けた行政機関は、委託者である市民に対し、新たな政策や既存の政策の進捗状況などを常に明らかにしていく責任がある」という理解になります。

 そうすると、たとえば仮に、みなさんの所有する土地などの不動産の運用をA信託銀行に任せたとしましょう。半年あるいは1年経過後に、みなさんが、その不動産の運用の状況をA信託銀行に尋ねたときに、「特定の目的による場合でないと答えられない」とか、「細かい数字は、見せられない」。あるいは「その不動産は、名義上は当銀行の所有であるから、当銀行の資産に関わることは答えられない」などと対応されたら、どのように感じるでしょうか。あきらかにおかしな対応だと理解できると思います。

福岡市役所 このような法的根拠により、市民の情報公開請求権は、その利用目的は問われないし、公開請求を受けた行政機関は、原則として公開することを義務づけられているのです。
 もちろん、「市政の信託」という場合は、個人的な財産の信託の場合とちがって、個人のプライバシーや法人の企業秘密、あるいは公益上の見地から公開できない情報などの非公開情報が存在しますが、基本的な理屈は同様に考えることができます。
 このように考えていくと、「情報公開制度(以下公文書公開制度を指します)」と「行政の説明責任(アカウンタビリティ)」は、「国民主権(住民自治)」に基づく「信託」ということを共通の基礎としていることが分かります。

 しかし、大きくちがうこともあります。
 それは、情報公開制度は、市民から公開請求があってはじめて動き出す制度であって、その意味で受動的な制度であるといえますが、「行政の説明責任(アカウンタビリティ)」は、市民から請求がある場合にとどまらず、行政機関の積極的な情報提供や情報公表を要請するという側面もあり、能動的な概念であるということです。
 換言すれば、情報公開制度は、行政の説明責任(アカウンタビリティ)の一態様であるということができます。
 そして、いずれも国民主権に基づく議会制民主主義(代表民主制)にとって不可欠な概念であることから、アメリカ憲法の父と称されたジェームズ・マディソンは「人民が情報を持たず、情報を入手する手段を持たないような人民の政府というのは、喜劇への序章か悲劇への序章か、あるいはおそらく双方への序章にすぎない」と指摘しています。

(つづく)
【寺島 浩幸】

≪ 第19回「行政情報は市民の財産」 | 

<プロフィール>
寺島浩幸氏寺島 浩幸 (てらしま ひろゆき)
福岡県立修猷館高校、福岡大学法学部法律学科を卒業。1987年に福岡市役所入庁後、総務局法制課、人事委員会任用課、情報公開室係長、市長室経営補佐係長、議会事務局法制係長などを歴任し、2010年8月退職。在職中、主に法律関係の職務に従事するとともに、市長直属の特命業務や議員提案条例の支援を担当するなど、市長部局と議会事務局の双方の中枢業務を経験。
 現在は、行政書士事務所を開業して市民の身近な問題の解決をサポートするとともに、地域主権の要となる地方議会の機能強化を目指し、議員提案条例アドバイザーとしても活動中。

<主な実績>
・日本初の協定方式による第3セクターの情報公開制度の条例化
・日本初のPFI事業(タラソ福岡)の破綻再生
・日本初の「移動権(交通権)」の理念に立脚した議員提案条例の制定支援

▼関連リンク
寺島氏ブログ
・ツイッターは、コチラ


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