野村ホールディングス（ＨＤ）の株価が急落した。オリンパスの1,000億円超とされる損失隠しの指南役として野村證券ＯＢの存在が浮上してきたからだ。一連の報道を受けて、野村ＨＤは11月８日、「野村グループの関与があるとの憶測に基づいた報道が本日一部にありました。かかる報道内容は憶測に基づくものであり、事実に基づくものではありません」とのコメントを発表した。だが、株価の下落に歯止めがかからない。10日には、一時、年初来最安値の237円に下落、16日の終値も242円（前日比11円安）に沈んだままだ。

＜リーマンの欧州・中東・アジア部門の買収失敗＞
　オリンパス疑惑に追い討ちをかけたのが業績の悪化だ。野村ＨＤ（渡部賢一グループＣＥＯ）が１日に発表した2011年９月中間連結決算によると、最終（当期）損益は283億円の赤字（前年同期は33億円の黒字）。中間決算の最終赤字は３年ぶり。欧州債務不安などによる市況低迷が響いたためで、欧州を中心とした人員削減など総額12億ドル（約936億円）のコスト削減を実施するという。

　欧州事業とは、08年に買収した米投資銀行リーマン・ブラザーズの欧州・中東部門のこと。破綻したリーマンから、同部門の従業員を引き受ける代わりに、わずか２ドルという破格の安値で買収した。だが、8,500人の高給を保証して雇い入れたためコスト高を招いた。リーマンの欧州・中東、さらにアジア部門の買収が、野村ＨＤの業績悪化の元凶だ。まさに安物買いの銭失い。野村ＨＤの再建には、リーマンから買収した欧州部門を切り離すことを求められているのである。

　野村ＨＤのＭ＆Ａ（合併・買収）の失敗は国際事業だけではない。国内事業でもＭ＆Ａに失敗した。外食大手すかいらーく（東京都武蔵野市）と大手リゾート施設ハウステンボス（長崎県佐世保市）は典型的なＭ＆Ａの失敗例である。

＜新生すかいらーくの発足へ＞
　野村ＨＤは10月21日、100％子会社である投資会社野村プリンシパル・ファイナンス（永松昌一社長）および同社の特定子会社であるＮＰＦ－Ｈarmony投資事業有限責任組合が保有する普通株と優先株を約1,280億円で、米投資ファンド大手のベインキャピタル・パトナーズに売却すると発表した。ベインは野村プリンシパル以外の株主からも株式を買い取り、すかいらーくの債権を含めた買収総額は約2,600億円になる。これでベインはすかいらーくの株式の９割超を取得することになる。

　すかいらーくは1970年創業のファミリーレストラン。かつて外食業界のトップを走っていたが、業態の変化についていけず収益が低迷。2006年に、創業家である横川家を中心とした経営陣による自社買収（ＭＢＯ）を実施し、株式を非公開化した。当時、日本最大級のＭＢＯと話題になった。

　すかいらーくのＭＢＯは約3,800億円。野村プリンシパルが約1,000億円と英ＣＶＣキャピタルが約600億円を出資して設立した投資事業会社ＳＮＣインベストメントに、みずほ銀行が約2,200億円を融資した。ＳＮＣが株式公開買い付け（ＴＯＢ）を実施してすかいらーく株を取得した額は約2,730億円。資金調達した約3,800億円との差額約1,070億円は、既存の有利子負債の借り換えと株式非公開化の手数料に充てられた。2007年７月、ＳＮＣがすかいらーくを吸収合併、新生すかいらーくが発足した。

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