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九州電力・第三者委員会「佐賀県知事⇒やらせメール」のロジック(後)
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2011年11月22日 11:13

 玄海原発の安全対策などの説明番組で発生した九州電力(以下、九電)の「やらせメール問題」において、古川康佐賀県知事の関与をめぐって、検証にあたった第三者委員会と九電側の見解は、相容れぬものになった。

記者会見を開く元第三者委員.jpg 趣旨やニュアンスが違うなどとするも、6月21日に知事公舎へ、退任あいさつのために訪問した九電幹部らに対し、原発の話題にふれたことは古川知事自身が認めている。一方、元第三者委員に送られた九電・眞部利應社長の文書によると、九電側が古川知事の「やらせメール問題」への関与を否定する根拠のひとつは、「知事および社員3名が否定している」ことであった。

 前回述べたように、第三者委員会の報告書は、古川知事の6月21日の会談における記憶のあいまいさを指摘。また、同知事と会談した当時の九電幹部3名に対するヒアリングを一つひとつ検証した結果、具体的な形になったものとして残った佐賀支店長(当時)が同会談後に作成したメモ(以下、九電メモ)を重要視している。然るに、「(佐賀県)知事の意図は措くとして、客観的な因果関係からいうと、知事の話した内容が発端で、いわゆる課長級社員の『やらせメール』につながった」(元第三者委員・阿部道明九州大学大学院教授)という認定を下しているのである。

 同認定に至る調査の経緯については、「やらせメール問題」の調査にあたった赤松幸夫弁護士以下12名の弁護士が作成した調査報告書(以下、赤松報告書。関連リンク参照)に書かれている。
 同報告書では、なぜ、佐賀支店長および九電メモの内容を確認した九電幹部が古川知事の発言を「やらせの要請」と受け取ったかということについての因果関係を調べるなかで「5/17対応の事実関係について」と題された、九電社内で「厳秘」扱いとされたメモ(以下、厳秘メモ)が出てくる。

 赤松報告書によると、厳秘メモには、「5月17日当日の午後、事務所から、『佐賀県庁のHPにおいて、知事に対する国の説明状況が生中継中であるが、同中継を行なっているユーストリームへの書き込みが反対派からのものばかりなので、賛成意見も書き込むように』との協力要請があったので、D部長にその旨を連絡した」(赤松報告書から引用。下線部はNET-IB編集部)との記載があり、メモ中の「事務所」は「佐賀県」のことであるという「B本部長」(赤松報告書ママ)の供述が第三者委員会に報告されている。

 この点について、九電側は最終報告書検証・評価チームにより、厳秘メモ関係者への調査(関連リンク参照)で、実際には、賛成意見投稿要請はなく、やらせも行なわれなかった旨の内容が「第三者委員会報告書に関しての疑問点」として示されている。

 ところが、九電メモには、作成した佐賀支店長が、古川知事の発言を「そう理解していた」として、「6月2日(5月17日の間違い)の県執行部に対する保安院説明時と同じ対応をお願いしたい」と記載している。一体、同支店長の古川知事発言に対する認識はどこから来たものなのか。

 一方で、古川知事は、8月9日の佐賀県議会 原子力安全対策等特別委員会で、6月21日に九電幹部と議会前(午前9時前頃)に知事公舎で会談したこと、趣旨やニュアンスが違うとはいえ、結果的にその時の発言が世間へ影響を与えたことについては認め、「軽率であった」と、同県議会および佐賀県民へお詫びしている。

眞部社長.jpg 九電・眞部利應社長は、11月19日、西日本新聞朝刊に掲載されたインタビュー記事で、古川知事の6月21日における会談での発言を「発端」とする第三者委員会の認定に対し、「『発端』には責任をも含む解釈に受け止められる」との解釈を示している。すでに古川知事が「九電幹部と会談し、原発に関する発言をした」という事実に対して、非を認めているにも関わらず、この反応は過敏なように感じる。

 11月17日、第三者委員会としての最終活動と位置づけて開かれた記者会見のなかで、元第三者委員の阿部道明教授は次のように語った。「九州電力の社員が佐賀県のためにやっているとみると興味深い」。九電社員の単なる「聞き取り違い」や「思い込み」で、「やらせメール」が発生したとしても、それはそれで、今なお終息を見ない福島第一原発事故が示す重大なリスクをもった原発の運用を管理する公益企業として致命的な問題があるのではないか。

 以下、参考となる資料などを関連リンクに示したが、このほか、九電の公式HPにも関係資料が公開されている。消費者として九電に関わっている以上、九電の社会的信用を損なわしめた「やらせメール問題」がどのような経緯で発生したか、我々一人ひとりが考え、今後の電力会社のあり方を問うていく必要があるように感じる。

(了)
【山下 康太】

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▼関連リンク
・第三者委員会・最終報告書(PDF)
・赤松報告書(PDF)
・九州電力「第三者委員会報告書に関しての疑問点について」
・九州電力やらせメール問題検証サイト(関係資料を公開中)


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