1人は、アクロス福岡などの設計で福岡市とも関わりの深い、世界的に著名な建築家の有馬裕之氏。もう1人は、世界で最も古く権威のある「英国チェルシーフラワーショー」で"世界一の庭師"としての地位を築いたランドスケープアーティストの石原和幸氏。いずれも世界の第一線で都市計画・都市景観の策定などにも携わっている2人である。彼らの目から見た都市づくりの在り方をテーマに、対談を行なった。
―石原さんは現在、ハウステンボスの方も手がけられていますが、そちらの取り組みはいかがですか。
石原 私は以前から、あそこを再生するためには「花に特化するしかない」と思っておりました。今後は高齢化社会になるなかで、「お年寄り向けのディズニーランドが必要なんだ」という想いがあったのです。そこでハウステンボスでは、「ガーデニングのワールドカップをやりましょう」「日本でここでしかない"突き抜けた緑のアート"を見せれば、日本中から人が来ますし、アジア、世界に広がっていきますよ」ということを提案しました。そして、これをスタートさせたわけです。そして現在、私はハウステンボスのガーデニングワールドカップのPR大使ということで、あちこちを回っています。
緑というのは、放っておけばみんなジャングルになってしまいます。これはやはり、「キレイだ」ということが大事です。みなさん「壁面緑化」とおっしゃいますが、キレイでなければむしろコンクリートの打ちっぱなしの方が良いです。キレイだからこそ、そこを通る人が写真を撮ったり、なかに入っているテナントの方が集客できたりして、結果として良くなっていくのです。私は、アーティストとしてそこを考えて設計していきたいな、と思っています。ハウステンボスでもそうです。
私は今53歳ですが、「私たちがまちをつくるんだ」という気持ちで、いろいろな方とコラボしながらやっていこうと思っています。
有馬 私は55歳ですから、ほぼ同年代ですね。やはり我々の世代は、こういう熱いパッションが必要な時代でしたよね。今の若い方がダメとかいうこととは違いますが、やはり夢を実演するためのエネルギーが要る時代でした。
石原 私の場合、たとえば、ディズニーランドを暇にさせてしまうくらい魅力的なアミューズメントのガーデンをつくりたいと思っています。そういったものが福岡にできればいいですよね。現実的にそのようなマーケットはすごくありまして、たとえば私は埼玉県秩父市で「芝桜」をプロデュースしたことがありますが、ここには5月の連休の1週間で100万人もの人が訪れました。つまり5月の連休中、ここは、日本全国でディズニーランドの次に人が集まる場所になったのです。
このように、花には人を集める力があるのです。あとは、都市の場合はどう建築と融合させていくか、ということです。
―「建築」と「緑化」の融合ということであれば、有馬さんは福岡市の緑化建築のシンボル的な存在「アクロス福岡」を手がけられています。
有馬 アクロス福岡については、あれはあれでいいのかもしれませんが、私はもっと自然豊かな―それこそ極端な話、「毒蛇でも出てもいいくらいの荒野のようなもの」をもともとデザインしていたわけです。
たとえば、私はヨーロッパにも長く滞在するなどしていて、向こうに友人もたくさんいます。ただし、こと建築に対する観点から言えば、ヨーロッパはあまり好きではありません。それはなぜかというと、ヨーロッパの建築はやはりルネッサンス時代の残り香であって、新たな建築がなかなか成り立たないように思います。もちろん観光の点から見れば面白いのですが、現代を生きる我々の心のなかにパッションとして強く響いてくるかというと、「アクアラングを背負って昔の空気のなかで生きている」ようにいつも思えてきます。
そういったものを見ていますと、やはりもっとプリミティブな原点に、今の段階でそろそろ戻りたいな、という思いがあります。
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<プロフィール>
有馬 裕之(ありま・ひろゆき)
1956年、鹿児島県生まれ。京都工芸繊維大学卒業後、80年に(株)竹中工務店入社。90年「有馬裕之+Urban Fourth」設立。さまざまなコンペに入賞し、イギリスでar+d賞、アメリカでrecord house award、日本で吉岡賞など、国内外での受賞暦多数。さまざまな地域活性の町づくり委員も務める。作品群は、都市計画から建築、インテリア、グラフィックデザイン、プロダクトデザインなどさまざまな分野におよび、日本・海外を含めたトータルプロデュースプログラムを展開している。
<プロフィール>
石原 和幸(いしはら・かずゆき)
1958年、長崎県生まれ。22 歳で生け花の本流「池坊」に入門。以来、花と緑に魅了され路上販売から店舗、そして庭造りを展開。その後、苔を使った庭で独自の世界観がガーデニングの本場イギリスの伝統行事「チェルシーフラワーショー」で高く評価され、06 年から異部門で史上初の3年連続金メダルを受賞。10 年にはショーガーデン部門初出展で銀メダルを受賞。全国で壁面緑化事業を展開し、環境保護に貢献すべく多方面で活躍中。著書に『世界一の庭師の仕事術』、『緑のアイデア』(WAVE 出版)がある。
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