1人は、アクロス福岡などの設計で福岡市とも関わりの深い、世界的に著名な建築家の有馬裕之氏。もう1人は、世界で最も古く権威のある「英国チェルシーフラワーショー」で"世界一の庭師"としての地位を築いたランドスケープアーティストの石原和幸氏。いずれも世界の第一線で都市計画・都市景観の策定などにも携わっている2人である。彼らの目から見た都市づくりの在り方をテーマに、対談を行なった。
石原 私は、九州はやはり福岡だと思います。もちろん、九州の他都市の力も重要ですが、アクセスやいろいろな部分を考えると、福岡が少し変わると九州は変わります。ただし、福岡には何かこうパッションというか、建築にしても緑にしても、特徴がないように思います。
たとえば、ニューヨークのまちの真ん中にセントラルパークがありますが、あそこがすごいのは、都市のなかにありながら、きちんと生態系が確立していることです。同じような発想が福岡でも行なえれば、非常に面白いのではないでしょうか。
―福岡市の場合、そういったことをするにはどの地区でやるのがいいでしょうか。
石原 やるからには、やはり天神や中洲など人が多いところでやらなければ意味がありません。土地がなければ、縦に庭をつくっていけばいいでしょう。"壁面緑化"ではなく、"縦に庭をつくる"という発想で都市を緑で覆っていき、『森のなかに福岡がある』というような都市づくりができれば、世界に向けてのアドバンテージになります。
植栽についても一定のルールが必要です。固有種保護の観点からも、「福岡はこの木はダメ」というものを決めておかなければなりません。
有馬 そういったポリシーが都市には必要ですよね。
セントラルパークもそうなのですが、都市のなかではきちんとした仕組みがあるから緑が成り立っている現実があるんですね。とくに私が好きなのは、デンマーク・コペンハーゲンにある「ストロイエ」という世界で最初にできた遊歩道です。あそこはそういう意味では、緑と人々のアクティビティ―活動がすごく融合しています。行くたびにいつもビックリするのは、土日にはお店が全部休むのに、なぜか人が山ほどいて、みんなウインドウショッピングをしたり、木陰を楽しんだりしている。
何か福岡の場合はその両方がいると思っていまして、一方では緑化とかそういった環境の保全なのですが、もう1つはやはり「アクティビティ」ですね。
石原 たとえばニュージーランドの話ですが、クライストチャーチとかいろいろなところで緑化をしようとしたときに、「まち並みコンテスト」を行なっています。そして、「このまち並みがキレイだ」となると、国がきちんと表彰します。そうすると、何百万人という人々がそこのまちに訪れるわけです。花をキレイにすれば商店街に人が来るから、そこのお店が繁盛するわけです。たとえばそういった「まち並みコンテスト」を、福岡でも行なってみると面白いかもしれません。
あとは、「ガーデンクラブ」という発想です。これは、時間に余裕のあるお年寄りの方々を対象に「ガーデンクラブ」というものをつくり、「まちをキレイにしていく」ボランティアをやってもらうというものです。そして、その活動に対してきちんと表彰していく。緑をコストではなく、"気概"で考えていくものです。そして、それにさらに祭をつなげていく。1つのイベントに対して、いろいろと足していくのが"相乗"ですから。
―ほかに、福岡の都市について、何かご意見はありますか。
有馬 私は、福岡は『川を見捨てているまち』だと感じています。那珂川の川岸ひとつとっても、親水性に乏しく、人々が水辺で触れ合えるようなつくりになっていません。せっかくこれだけ都市部に川があるにも関わらず、まったく武器として活用できていません。
石原 たしかに、ここから見ていても、立ち並んでいるビルはほとんど川を背にしてしまっていますね。たとえば極端な話、ビルの1階に船着場があって川から直接移動できるような、そういう大胆な河川整備などを行なえたら非常に面白いのではないでしょうか。
有馬 あと、「湾」も軽視されていますね。私は福岡出身ではありませんが、福岡が好きで住んでいます。しかし、相変わらず"外の目"で見ると、博多湾に対するアプローチのゾーンにまったく何もないのが悲しくなります。福岡市は、もっと『湾』を大きく捉えた拠点づくりをすべきではないでしょうか。
たとえば、フィンランドのヘルシンキなどにも同様の湾はありますが、そこでは朝に毎日マーケットができ、市民が食事や買い物をしたりするなど、生活の延長線上にきちんと湾が機能しています。
石原 それが、イベントですよね。そこに住んでいる人が楽しいと思えるのが、まず一番です。それが都市にとっては、原点になりますよね。やはり、文化でも何でも、「原点に戻る」ことです。そうすれば、絶対に強いはずです。
有馬 感動の原点ですよね。やはり、「共感、感動の原点」に戻らなければなりませんよね。
石原 「福岡はなぜ栄えたのか」という原点に立ち戻ったうえで、「今後どうやって栄えていくのか」ということを議論したときに、「ここをどのようにしていかなければならない」ということが見えてくる気がします。
有馬 私がもう1つ思っているのは、福岡は、いわゆるインバウンド―内側だけの消費の考え方になってはダメなまちだということで外との大きなリレーションシップをどれだけ拡大できるか―。そのために、いろいろな想いを持った方々が、お互いに交流しながらやっていくことが必要になってくるでしょう。
(了)
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<プロフィール>
有馬 裕之(ありま・ひろゆき)
1956年、鹿児島県生まれ。京都工芸繊維大学卒業後、80年に(株)竹中工務店入社。90年「有馬裕之+Urban Fourth」設立。さまざまなコンペに入賞し、イギリスでar+d賞、アメリカでrecord house award、日本で吉岡賞など、国内外での受賞暦多数。さまざまな地域活性の町づくり委員も務める。作品群は、都市計画から建築、インテリア、グラフィックデザイン、プロダクトデザインなどさまざまな分野におよび、日本・海外を含めたトータルプロデュースプログラムを展開している。
<プロフィール>
石原 和幸(いしはら・かずゆき)
1958年、長崎県生まれ。22 歳で生け花の本流「池坊」に入門。以来、花と緑に魅了され路上販売から店舗、そして庭造りを展開。その後、苔を使った庭で独自の世界観がガーデニングの本場イギリスの伝統行事「チェルシーフラワーショー」で高く評価され、06 年から異部門で史上初の3年連続金メダルを受賞。10 年にはショーガーデン部門初出展で銀メダルを受賞。全国で壁面緑化事業を展開し、環境保護に貢献すべく多方面で活躍中。著書に『世界一の庭師の仕事術』、『緑のアイデア』(WAVE 出版)がある。
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