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特別取材

今こそ試される本当の意味での都市づくり(後)
特別取材
2012年1月 2日 07:00
国立大学法人富山大学 芸術文化学部 教授 伊東 順二 氏

 「地域」という機能の在り方が問われている大震災後の日本における、都市の魅力の引き出し方とは―。長崎県美術館の前館長であり、現在は富山大学で教鞭を執っているほか、富山市の政策参与も務めており、現在、福岡市の「アイランドシティ・未来フォーラム」にも委員として参加している伊東順二氏。福岡市の都市づくりのこれからや、大震災後の日本の復興策などについて、同氏に話を聞いた。

(聞き手:弊社代表・児玉 直)

 ―市役所に、選択の幅をいろいろな角度から突きつけていかなければなりませんね。

 伊東 おそらく、福岡市には行政的なキーマン―行政側の策定リーダーが不足しているのではないでしょうか。

 髙島市長はまだなったばかりですから、全部の情報を吸収しきれていないのでしょう。ただ、やはり市長の指導力というのは大事だと思います。市長に対して、どのような優先順位で案件を片付けていくかというアドバイスを的確に行なえるブレーンを何人持てるかが、今後の髙島市政が続くかどうかの課題になると思います。

 もちろん、それはただ待っているだけではいけませんので、自分で選んで、自分の足りない部分を補強していくかたちでアドバイザーを置くといいでしょう。私は富山市のアドバイザーをやっていますが、「市長の代理」がいるというようなスタンスです。

 「福岡市は民間企業で成り立っている」と言っても過言ではないくらい、民間には優秀な方々がいらっしゃると思います。髙島市長も、そういった民間の優秀な人材や外から見ることのできる人材を見つけ、自分自身の統治構造をつくられることも大事だと思います。

 ―福岡市の市政についていろいろとご意見ありがとうございます。話は変わりますが、今後の日本の環境やエネルギー問題、都市づくりについてのトータル的なご意見をお願いします。

伊東 順二 氏.jpg 伊東 基本的に、単なる建物の再生というのは、資金さえあれば簡単な話です。しかし、あれほどのダメージを受けてしまったおかげで、現在、東北の"故郷"という機能そのものがなくなりつつあります。そのため、それをどう再生していくかが一番の問題で、つまりは「新たな建物に、どう心を入れていくか」という、本当の意味でのまちづくりが試されています。新しい建物を立てても、そこを故郷と思ってもらえなければ、元いた方々が住むことにはつながりません。そのため、「何を再生させなければいけないのか」がポイントになります。その土地、その土地の風土にあった建物や景観をつくらなければならないとか、そこに住む人口数を考え、どのような産業ができる土地なのか―などを考えなければなりません。そうしなければ、その地方特有の産業効果をなくしてしまいます。

 私は、東北全体を「公社」にするのが一番良いと思っています。債権をすべて買って公社にし、住民たちをすべて社員にする―債権を財産として考えることも大事です。いわゆる「ホールディングス」をつくり、東北全体を1つの会社として、雇用も確保していくということが1つの手だと思います。国が基本的な投資をして、最終的には利益を生み出すというような壮大な実験も行なってみる方がいいのではないでしょうか。

 国としては、負債をどうするかというのが問題になります。その負債をチャラにすることもできないのであれば、負債を財産にしてホールディングスをつくり、将来的に増税だけで開発するのではなく、利益として還元していく。つまり、100兆円くらいの経済効果を将来もたらすことができるような地域だと思いますので、産業分析や資源分析を行ない、東北をある意味1つの国のようなかたちにしていかなければなりません。

 今は、とても大きな国のスキームづくりを試されているときだと解釈しています。そういった試みに挑戦して経済活動を続けていかないと、再生はあり得ないでしょう。負債を負債と考えず、負債が財産であるというような"投資"だと考えて行動する―私は、それが本当の復興だと思います。

 日本中どこでもそういう事態になり得るからこそ、こういった再生プログラムをつくる実験というのは必ずやっておかなければなりません。そのためには、各都道府県がその経済規模にあわせて投資していく。逆に、ペイバックはあるという前提ですから、遠くの各地域の協力が必要です。

 とにかく、被災地の方々は今、働きたくても働ける環境にいません。働かないと人間は、生物学的な意味ではなく"死んで"しまいますから、まず彼らにとって一番大事なことは、プライドを再生させて働かせることです。たとえば国が2年間食べさせれば、その2年間は何もしませんよね。この状況だからこそ、きちんと2年間働かせることが大事なのではないでしょうか。

 こういうことを震災後、私はずっと考えてきました。今だからこそ、世界でまだ誰も試みたことのないようなことを、「日本だからこそやれる」という意気込みでやればいいと思います。

(了)
(文・構成:坂田 憲治)

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<プロフィール>
itou_p.jpg伊東 順二 (いとう・じゅんじ)
富山大学芸術文化学部教授
美術評論家/プロジェクト・プランナー/プロデューサー
1953年、長崎県生まれ。早稲田大学仏文科大学院修士課程修了。仏政府給費留学生としてパリ大学、およびエコールド・ルーブルにて学ぶ。83年の日本帰国まで、フランス政府給費研究員として、フィレンツェ市庁美術展部門嘱託委員(80)、「フランス現代芸術祭」副コミッショナー(82)などを歴任。帰国後、美術評論家、アート・プロデューサー、プロジェクト・プランナーとして活動を開始。㈱JEXT代表取締役を経て、04年に長崎県美術館館長となる。05年、富山大学芸術文化学部文化芸術学科教授に就任。07年、富山市政策参与および長崎県文化芸術アドバイザー。10年、東京芸術大学大学院非常勤講師。展覧会の企画監修、アート・フェスティバルのプロデュース、アート・コンペティションの企画実施、都市計画、また、企業、協議会、政府機関などでの文化事業コンサルタントとしても幅広く活躍中。




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