かねてより"冬の時代"を迎えていた建設業界だが、東日本大震災の発生による日本経済への大ダメージにより、さらなる新たな局面を迎えている。震災復興による"建設特需"が期待される一方で、復興以外の公共事業の縮小による冷え込みも懸念されている。この時代において、求められる建設業のあり方や役割とは―。(社)福岡県建設業協会の会長も務めている、(株)松本組の代表取締役社長の松本優三氏に、話を聞いた。
<耐えていくことが貢献>
―今、震災後の復興ということで、建設業にとってはある意味チャンスではないのでしょうか。
松本 我々のように地域に密着している業者にとっては、今回の震災がそういった意味でプラスに作用するということはありません。どちらかというと、これから国が震災の復興に力を入れていくなかで、そのほかの公共工事の削減については仕方ない部分が出てくるでしょう。これに耐えていくことが、ある意味で震災の復興に対する"貢献"だと認識しています。
―まずは、東北の再生が最優先ということですね。
松本 それは間違いないことです。そしてそういった意味では、これから建設業はもっと冷え込んでくると思います。この15年間冷え込み続けた建設業ですが、今までは「再編」や「淘汰」とは言っても、ある意味でお題目のようなところはありました。しかし、これからは実態をともなっていくでしょう。
―しかし、耐えてばかりでは報われませんね。現在、エネルギーの転換時期に来ていますから、そういった関連の仕事もつくれるような気もするのですが。
松本 そうですね。そういった部分へのシフトというのはこれから必要になってくると思いますし、自然にそのようになってくると思います。
―やはり、"座して死す"というわけにはいきませんからね。
松本 今まで、自力ではなかなか"身を削って"というようなことができなかった、あるいは、新しい投資をどこにしようかというようなことも考えられなかった建設業ですが、今回のことをきっかけにして、"建設業全体の産業再編"が出てくる可能性はあるでしょう。
<"量"から"質"へ>
―福岡県建設業協会としては、どのように考えていきますか。
松本 現在、業界には2極化という流れがあります。"入札制度はくじ引きで"というような流れがある半面、企業の差別化や区別化、優劣化―こういったものをお客さまにもしっかりとした認識を持っていただく―そういった作業も大事だと思っています。いつまでも業者は全部同じ横並びで、「どこが取っても同じだ」というような時代は早く終わらせなければなりません。「どうしてこの仕事はこの会社が取らなければいけないのか」―そういった理由付けがはっきりしていないと、みんな汗を流す理由がありませんよね。
ですから、そういった意味では、いろいろなプロジェクトのなかに入っていったり、さまざまな部分で建設業以外の人とコラボしたりして、手を携えていくことが大事だと思います。また、そういう人たちから認められる企業づくりも、もちろん大事になってきます。
―福岡県の建設業協会というなかでは、皆さんに対して会長としての指針なりを示していかなければならないと思いますが、どのような提案をされていますか。
松本 やはり建設業協会も、もう数の時代ではありません。そこに「どのような優れた会員の皆さんがいるか」ということの方が、大事です。ですから、お互いに情報を交換しながら、お互い切磋琢磨できるような環境で、建設業全体の浮揚に向けて取り組んでいかなければなりません。
そのためには、やはり1企業1企業が研鑽をし、精進して、今の新しい建設業づくりを構築していく―これがまず大事です。その後に建設業全体の話になってくるのですが、まずは「1社1社をきちんと認めてください」「1社1社の比較をしてください」ということが大事だと思っています。
これからは、業界全体が"護送船団方式"でやれるかというと、それはちょっと難しいと思いますね。今はお互い、与信も含めて信頼が置けたり、たしかな手腕を持っていたりする会社が生き残っていく―そのような建設産業にしたいと思っています。
―となると、もう淘汰は仕方ありませんね。
松本 やはり、数の問題ではなく、質の問題になってくるのだと思います。建設業界も、"量"から"質"です。
<安心・安全のために>
―今回の大震災に限らず、近年は自然災害が増加かつ、激しさも増しています。
松本 そうですね。たしかに近年は、台風やいろいろな水の問題など、風水害の事故がものすごく増えています。ですから、今、公共事業のあり方をみんなで少し勉強していきたいな、と思っています。これは自治体とも連携をしながら、防災・減災を含めた考え方で、これからの「安全で安心して住める国土づくり」というものの構築をしていかなければなりません。そして、それは今の建設業の役目だと思っています。
―現代の治水というものは、要するに頑強に土手をつくりさえすればいい、というようなものでした。しかし、それを超えるような雨が降るようになった場合、発想自体を変えていかなければなりませんね。
松本 そうだと思います。今は、雨が降る地域や雨の量、さらには降り方自体も変わってきていますから、新しい国の指針として、分析などを含めたそういった対策を、今やっていかなければなりません。やはり、風水害で人が亡くなるというようなことを、限りなくゼロにしていくというのが、私は正しい考え方だと思います。
今まで、公共事業には莫大なお金を使ってきていますが、それでもああいった被害が起きているわけです。やはり、どこかで見直さなければならない時期が来ていると思います。また、これはとても大事なことなのですが、国民の皆さんに公共事業の必要性というものを、もう少し理解していただけたらと思います。
我々としては、安心・安全な国土づくりを頑張っていくだけの話です。今の環境が変わってきたものについての対応を、我々も一生懸命検討していきますし、国民の皆さんにも建設業に対する理解を求めていきたいと思います。
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