ネットアイビーニュース

NET-IB NEWSネットアイビーニュース

サイト内検索


カテゴリで選ぶ
コンテンツで選ぶ
会社情報

コダマの核心

迷走の果ての野村HDの末路
コダマの核心
2012年2月 1日 18:12

 野村ホールディングス(HD)のリーマン切りが佳境だ。年明け早々から、2008年に買収した米リーマン・ブラザーズ出身の幹部が相次いで退職した。「本人から辞任の申し出があった」との公式発表を信じる業界関係者はいない。リーマン切りは、再生への第一歩なのか、それともメガバンクの傘下に入る布石なのか。

<リーマン元幹部が相次いで退職>
 野村HDは1月10日、ホールセール(法人向け業務)部門トップのジャスジット・バタール副社長(55)の退任を発表した。インド出身のバタール氏は英オックスフォード大学卒。1993年にリーマンに入社。リーマン破綻時はアジア太平洋部門のトップ。野村移籍後は、グローバル金融機関化を進める牽引役となり、昨年、ホールセール部門の最高経営責任者(CEO)に就任したばかりだった。

 さらに、グローバル・マーケッツ部門を統括するタルン・ジョトワニ専務(51)も退任した。グローバル・マーケッツは国内外の機関投資家向けに債券や株式を売買する部署で、欧州債務危機と世界的な証券事業の規制強化の影響を最も受けた。野村が進める12億ドル(約924億円)に及ぶコスト削減の一環として、廃止することを決めた。ジョトワニ氏も昨年3月に昇進したばかりだ。
 野村のホールセール部門は、グローバル・マーケッツと、M&A(企業の合併・買収)や社債発行引き受けを担当するインベストメント・バンキングからなる。今後は、ホールセール部門が直接、債券や株式の売買を管理する。ホールセール部門トップは柴田拓美・最高執行責任者(COO)(59)が暫定的に兼任している。

<海外部門で赤字が膨らむ>
tikyugi.jpg 野村が2008年に経営破綻した米投資銀行リーマン・ブラザーズの欧州とアジアの事業部門を買収して以来、人件費が増え、海外部門の赤字が膨らんだ。11年7-9月期連結決算で、純損失が461億円の赤字に転落。これを受け、米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは野村の格付けを引き下げる方向で見直すと発表した。2段階下がれば投資不適格となり、債券市場からの資金調達は困難だ。株価は下落、時価総額は1兆円を割った。
 そのため欧州部門を中心に1,000人規模の人員削減を打ち出した。その象徴が、バタール氏とジョトワニ氏のリーマン出身幹部の事実上の解任だ。トカゲの尻尾切りではなく、経営トップが引責辞任するのが先ではないか。リーマン買収失敗の責任は、渡部賢一・最高経営責任者(CEO)(59)と柴田拓美・最高執行責任者(COO)の2トップにある。

<リーマン買収立役者の2トップ>
 2008年4月、野村HDは経営体制を刷新した。渡部氏をCEOに据え、その右腕として野村アセットマネジメントから柴田氏をCOOとして呼び戻した。柴田氏はハーバード大経営大学院で経営学修士号(MBA)を取得。ロンドンの12年をはじめ、香港、ボストンなど計17年の海外駐在で、欧米市場での経験を積んだ国際派だ。

 2008年9月、米投資銀行リーマン・ブラザーズが破綻。北米事業は英銀大手バークレイズに先を越されたが、柴田氏は香港とロンドンへ飛び、アジア・太平洋部門と欧州・中東部門を立て続けに買収を決めた。渡部CEOは、「24時間のあいだにビジネス領域を一気に拡充することができた」と誇らしげにコメントしたものだ。

 価値の下落の恐れがある不動産や有価証券などの資産や負債は引き継がず、投資銀行最大の財産である「人材」に絞って買収を提案し、英バークレイズなどに競り勝った。欧州・中東部門の買収価格はたったの2ドル。野村によれば「会社を買収したというよりも、人材を買収した」。野村の社員よりも、はるかに高度な金融知識、投資ノウハウを持つリーマンの社員を自社に囲い込み、グローバルな投資銀行に脱皮することを狙った。

 野村の社員の平均年収が1,000万円台なのに、リーマン社員は4,000万円台。高給を保証してリーマンの株式部門や投資銀行部門の8,000人を引き継いだことで、人件費が急増。欧州債務危機で利益も生まなくなり、重荷となった。さらに、ホールセール部門の日本人社員まで、リーマンの成果連動報酬体系に変えてしまった。

 リーマン買収の失敗は、海外業務への傾斜と高額報酬が原因だ。経営体制の刷新説が駆け巡る。これまで後継者は、投資銀行部門であるインベストメント・バンキング エグゼクティブ・チェアマンの山道裕己専務執行役員(56)と、CEO/COO担当の山﨑啓正専務執行役員(50)の2人と見られた。CEO/COOオフィスとは、渡部CEOと柴田COOの直下に置かれたグローバル経営戦略の根幹を担う部門として11年4月に新設された。両氏は柴田氏が率いるリーマン買収チームのメンバーだった。
 だが、リーマン買収の失敗が明らかになり、本命視されてきた山道、山﨑両氏の昇格は難しい。それまで冷や飯を食ってきた国内営業部門には巻き返すチャンスだ。CEO/COOオフィス担当となった国内支店を統括する営業部門出身の森田敏夫常務執行役員(53)の名前が急浮上してきた。

<三菱UFJの傘下に>
 リーマン・リスクが発火点となり、メガバンクによる買収説が噴出した。有力候補に挙げられているのは、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)だ。「野村・MUFG統合の可能性について」。米シティグループ証券は昨年11月10日付けの投資家向けレポートで、この問題を論じた。証券界には同業他社に触れないという不文律があり、証券レポートが取り上げるのは異例なことだ。
 同レポートは「短期的には買収・合併の可能性は低い」としながらも、世界的な金融危機がさらに悪化し、流動性が著しく低下した場合には、「商業銀行と投資銀行の統合は十分ある」と指摘した。市場は「統合あり」と受け止めた。

 MUFGは買収に関して1つ条件を出している。「リーマンはいらない」。米モルガン・スタンレーと提携して三菱UFJモルガン・スタンレー証券を設立したが、大手では最下位で、しかも、トレーディング損失により11年3月期に1449億円の巨額損失を計上した。

 モルガンとの提携解消は時間の問題とされ、その後釜に狙い定めたのが野村HDだ。欲しいのは、最強といわれる野村の国内営業部門。海外の投資銀行業務はいらない。野村のリーマン切りが、三菱UFJの傘下に入る布石と受け取られても不思議ではない。2月1日の3月決算見通しの発表を機に、野村と三菱UFJの銀証統合の動きが強まるだろう。


*記事へのご意見はこちら


※記事へのご意見はこちら

コダマの核心一覧
コダマの核心
2012年12月16日 19:32
コダマの核心
2012年12月 7日 17:48
コダマの核心
2012年12月 5日 11:25
コダマの核心
2012年12月 4日 16:34
「自爆民主党解散」シリーズ
2012年11月16日 09:40
コダマの核心
2012年11月 8日 10:13
コダマの核心
2012年10月30日 11:00
コダマの核心
2012年10月16日 07:00
コダマの核心
2012年10月15日 13:35
日本国家"根源的変革"の処方箋シリーズ
2012年10月14日 07:00
コダマの核心
2012年10月11日 10:27
コダマの核心
2012年10月10日 11:06
コダマの核心
2012年10月 5日 10:11
NET-IB NEWS メールマガジン 登録・解除
純広告用レクタングル

2012年流通特集号
純広告VT
純広告VT
純広告VT

IMPACT用レクタングル


MicroAdT用レクタングル