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コダマの核心

企業存在の自負こそが価格設定の主導権を握る~(株)小笠原
コダマの核心
2012年9月 6日 16:58

 どの中小企業もデフレスパイラルに流されて田質を消耗させている。経費カット、カットの果てには人件費までもギリギリ削るところまで追い込まれる。経営者は世のなかを恨み、得意先を「鬼だ」と罵る。しかし、儲からないビジネス構造を変革する勇気はなく漫然と御臨終するまで無策に終始する。だが、一部の企業には「潰されてたまるか!!」という意地を燃やして自らの主導権で価格設定するビジネスに挑戦するところもある。この果敢な闘いを展開している一例、「(株)小笠原の闘い」を紹介してみよう。

<目先に流れる>
 どの企業も自社で優位な価格設定をできるビジネスモデルを模索している。建設業界においても【請け負けからの脱皮】が叫ばれて久しい。元請け業者が儲からなければ下請け業者は半死状態に放置される。その下請けを代表するサブコン=空調設備業者は『リニアール事業』に挑戦する。それなりの粗利を確保するのは容易だ。ところがゼネコンからの下請け仕事が急増すると安易に馴れ親しんだほうにシフト換えする。

 ある経営者は「わかっちゃいるけど技術者の数にも限度があり『リニアール事業』が手抜きになってしまう」と反省する。「なぜ、【リニアール事業】を設置したのか?」の原点に立ち返って見ることだ。切羽詰まった常態を打破して「価格の主導権を握りたい」という強い情念を抱いたからであろう。この初心を忘れてはならないのだが、人間、経営者たるもの者は安きに流れる嫌いがある。だが自社の企業存在にプライドを持っている経営者にはぶれはない。どんな壁にも怯まずに信念を貫き通すことを諦めない。その一例がここに紹介する建材商社の(株)小笠原(福岡市博多区)である。

<あらゆるところにネットワークを築いたが...>
 建設の請負業が採算面で事業としての対価を得られなくなった以上に建材商社も物流(=物の動かし)だけでは商いが不可能になってきた。小笠原の前身はセメント・左官材料販売の建材店であった。事業のスタートは佐賀県鹿島市である。現在の重松会長が大票田福岡へ新規開拓の命を受けて颯爽とやってきた。持ち前の負けん気を駆使して建設業者・デベロッパー・同業者・設計事務所に飛び込み大半のところと親しくなった。いろいろなパーティに出席すると、重松会長に会い「またお会いましたね」とあいさつすることが度々あった。

 この重松会長に刺激を受けて小笠原社長も負けずと営業開拓に注力した。平成第1次バブルまではこの積極果敢な人脈づくりを背景に【ゴルフとカラオケ】の付き合いをすれば充分な儲けが得られていたのだ。この2人を頂点とした小笠原の営業部隊は取引可能な先の大半には口座を開いたのではないか。この【開拓できるところはすべて開拓し尽くした】という営業行動の蓄積があったからこそ、その後の方向転換がスムーズだったのだ。

 同社も時代の荒波(デフレ)を乗りきるために業態チェンジを推進した。浴槽・台所水回りのシステムキッチンなどの住器納品を工事付き(左官職人を使った工事込み)の受注に切り換えた。不良債権のリスクを回避するために弱小業者との取引は疎遠にした。設計事務所へのアプローチという高度なセールステクニックも駆使したのである。あらゆる手立てを講じても「メーカーから既成品を仕入れて得意先に納入しても企業の尊厳を保たれる対価は得られない」という結論に達した。

 度々、繰り返すが、この結論に達し得たのは最大限の苦労を積み重ねたからである。「何をすれば報われるか?」を社内で徹底的に議論した。小笠原は貴重な経験を有していた。子会社で【ネクスト】というリフォーム会社を持っていたのである。この【ユーザーダイレクトリニアール】ビジネスの組織的経験が飛びこみ営業に生かされた。ユーザーへリニアールプランを提案し価格を制する訓練に磨きがかけられていた。

<解決能力のあるメーカーへの道を模索>
 社内で将来を展望する経営戦略の論議が始まった。「どうして対価を得られるビジネスが構築できるか?」という設問に対して議論が沸騰して「お客の悩みに対して解決できる能力を身につければ収益の確保ができるのではないか」という解答に達する。「では我が社の実力で問題解決できる領域は何か?」という新たな命題が生じる。そうすると「それはやはり水回りに関するビジネスしかないだろう」と議論が進展していく。

 「浴槽の分野では既存の大手メーカーの既製品では立ち往生するケースがたくさんあるぞ!!」。「そうだなー、既製品では満足できない現場には我々は苦労したものだ。ここのトラブルを解決するにはその現場にあった特注の浴槽が有効になったことがあった!!」と、仕事の苦難体験を振り返って具体的に議論が進行していく。ある日、忽然と「現場、現場に沿った浴槽風呂を提供できるメーカーに挑戦するか」という社内意志が統一された。「製造は委託すればヨシ」という結論に達した。岐阜県内の製造業者に発注することした。
 社内ではまだまだ激しい討議を繰り返した。「特注浴槽といっても幅が広い。市場も絞り込む、限定することが必要だ。小笠原しかできないものはなにか」と思考錯誤の連続となった。到達したのは「介護用の特注浴槽、すべての悩みを解決します」、「病院の浴槽メニューにはすべてに応えられます」という差別化の次元であった。

ogasawara.jpg 【フリーユニットバスメーカー】と銘打って「病院、介護施設、老人ホーム、高齢者住宅などの提案は特に得意とする分野であります」とHPにはうたってある。ネットによる【病院・介護施設】に特化したアピールは効を奏した。毎月数十件の問い合わせがありそのなかから確実に成約につながっている。また全国のメインになる設計事務所への商品説明には余念がない。また業界の展示会には欠かさず出店している。いまや小笠原が建材商社であることを知るものは少数派であり【フリーユニットバスメーカー】としての地位を確立した。

 現在、東京での営業活動がメキメキ実績をあげている。更に東北の津波被災地域でも介護施設の大型プロジェクトの引き合いが殺到しているのが楽しみだ。建材商品の販売から工事に業態を替えそして問題解決の【フリーユニットバスメーカー】へと変身していた小笠原は企業の存在の尊厳を保つため(適宜な報酬の確保)の挑戦には頭が下がる。中小企業は生存の条件として【適応力】が必要である。中小企業の経営者たちは同社から学ぶことがたくさんあるのではないか!!


▼関連リンク
・医療・介護分野におけるフリーユニットバスのエキスパートとして(前)~(株)小笠原


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