企業・人再生シリーズ（44）
ラオスで、世界で鍛えられ、活躍する日本人（前）

　昨年９月にカンボジアへ視察に行った際に、偉大な日本人たちに邂逅できた。そこで代表して２名の方を紹介した。１人が内田弘慈僧である。カンボジアで井戸掘りの運動から孤児を預かる『だるま愛育園』を立ち上げた人だ。次に『一二三日本語学校』を運営している鬼一二三氏である。そして、今回訪問したラオスでも、素晴らしい日本人を知った。

＜ラオスで最大の日本人の恩人・久保田豊氏＞
　福岡・ラオス友好協会（会長・津田悦男氏・津田産業会長）主催のラオス経済投資視察に参加した。２月16日から21日までの６日間で、参加者24名は各方面をフル稼働して廻った。今ようやくこの国は、経済発展のインフラ整備が始まった段階である。今回のハイライトは、ビエンチャン市教育局に体重計50台を贈呈したことである。ラオスで初めてオープンした民間病院ものぞいた。福岡市で活躍していた女医が、この病院に活躍の場を求めてやって来たことを知った。華奢な体つきであるが、使命感に燃えた人である。
　経済投資セミナーも受講した。中国・タイ・ベトナム・韓国の投資は活発なのに、日本は立ち遅れている状況を知った。講師は「ラオスは親日なのだから、チャンスはいっぱいある」とラオス投資のメリットを強調してくれた。ラオス証券取引所も訪問した。
　その行く先々で耳にしたことがある。「ラオスで一番貢献した日本人は久保田だ」と。「Who is　クボタ？」。少し勉強してみた。

＜国士・久保田豊のプロフィール＞
　東南アジアの山岳国家、ラオス。豊かな水と農業中心としたこの国は、金銭的には決して恵まれているとは言い難いが、食べるに困らない心が豊かな国である。この国の持つ１つの特徴に、エネルギー政策がある。同国の主要輸出品目は鉱物資源、縫製品、木材、それに次いで電力なのである。国内の豊富な水を使った水力発電がその主役を担っており、ラオス外貨稼ぎ高の40％を占めている。

　その道筋をつくった立役者の１人が、日本工営創始者である久保田豊氏だ。1890年、熊本に生まれた久保田氏は、東京帝国大学を卒業後、日本窒素肥料㈱取締役を経て、朝鮮電業㈱社長に就任し、朝鮮半島での水力発電所建設に尽力した。出力60万kWの水豊発電所をつくるなど、その技術力を高めていった。久保田氏にとって運が良かったのは、『朝鮮半島の事業主』と呼ばれた野口遵氏の下で働くことができたことである。野口氏は旭化成など、日本の化学工業の礎を築いた大物だ。

＜ラオスの経済復興の恩人＞
　朝鮮での経験を活かし、戦後、日本工営を設立し、東南アジアエリアでの大規模水力発電所の建設に携わることとなる。久保田氏はメコン川流域開発調査団の一員に名を連ね、東南アジア各国の状況を研究し、自身も持つ技術力の活かしどころを考えた。メコン川の豊富な支流を持つラオスは、そのなかでもとくに重要な国となったのである。

　ラオスの水力発電の象徴的な存在であるナムグムダムの建設にも、日本工営がコンサルタントとして関わっている。1971年に竣工したナムグムダム建設は日本主導でなされており、その際に３万kWのタービンが２基設置された。今では、日本とラオスとの友好のシンボルともみなされている。このダムは、後に世界各国の協力のもと拡張されていき、75年に４万kWが２基、83年にはさらにもう１基が追加されている。ここで発電されている電力の多くは隣国タイに送られており、ラオスの重要な外貨収入源となったのである。総発電量は240万kWとも言われる。原発２基分に相当する発電力だ。

　久保田氏はラオスのほか、世界各国をフィールドに活躍を続ける。その功績が認められて、85年には勲一等旭日大綬章を受章した。そして翌86年、96歳の生涯を終えることとなる。

　久保田氏の活躍の場は、主に発展途上国だったという。それぞれの地にダム・水力発電という足跡を刻み、その地がそれによって潤う仕組みをつくり上げていったのだ。久保田氏の活躍、その恩恵がラオスに今も生きており、日本との平和的な関係構築にも一役を担ってくれている。真の"国士"とはこういう人物のことを言うのだろう。しかし、日本にいてはその偉大な貢献度合いを理解できない。現地に行ってしかわからないものだ。

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