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積水・大和特集

セキスイWATCHING(14)~企業改革(3)
積水・大和特集
2010年3月 1日 13:42

 意見具申のない会社には、将来はない。

 「主人の悪事を見て、諫言する家老は、戦場にて一番槍を突き立てるよりも、はるかに増したる心得なるべし」徳川家康の言葉である。一番槍で討ち死にしても、主君から高い評価を得られ、末代まで讃えられる。ところが、主君は耳の痛い意見を嫌い、手打ちか閉門、現在ならば左遷、閑職に配置転換である。家康は「それを覚悟で諫言する部下こそ、家の宝である」と言ったのである。
 ワンマン型の会長や社長は側近の甘言を喜び、諫言を嫌い、驕った態度をとりがちである。かつての土光氏が(後の国鉄改革を行なった臨調の会長)東芝の社長に就任したときの記者会見で、開口一番に「東芝の悪口を聞いたらすぐに教えてもらいたい」と言った話は有名である。迎合的幹部、ごますり幹部は、むしろ会社を毒することを知っていたのである。

 1年の間に、一回も意見具申しない幹部は失格である。実力者である会長や社長の顔色ばかり見ているような、イエスマンの幹部はいらない。イエスマンの幹部が横行している会社は、衰退の方向に向かっていると言っても過言ではない。イエスマンは風見鶏。風を見て、すぐに態度を変える。重用しているつもりでも、弱みを見せれば平気で寝返るものである。

 中国古典であり儒教の経典の一つである「大学」のなかに「徳あれば此れに人あり。人あれば此れに土あり。土あれば此れに財あり。財あれば此れに用あり」とある。徳を備えていれば人が集まり、人が集まると国土を保てる。そうなれば、財も資材も集まり、それを用いて業績も上がるという意味である。

 現在でも、トップが徳を失うようなことをする、あるいはそういった噂が立つなどすれば、表面は権力で抑えていても社員の心は乱れ、士気の低下となって業績は落ちていくものである。
 経営トップは高い徳と高い品性を備え、人から惚れられる魅力を持っているべきである。積水ハウスの場合は、創業社長田鍋氏がそれに近く、ほとんどの社員、外部の協力工事店からも尊敬と畏敬を集めていた。
 経営者の人柄に「惚れる」と、社員や工事店は「無理ができる」ようになり、いかなる危機も乗り越えることのできる大きな原動力になるのである。

 今、積水ハウスに必要なのは、「この一点」にあると言わねばならない。

(つづく)

【野口 孫子】

※この連載は積水ハウスに対してエールを送るものであり、誹謗中傷を目的とするものではありません。

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