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タラソ福岡=PFIの失敗(前)~福岡市・行政改革の実態(28)
行政
2011年2月17日 08:00

 官民協働で低廉かつ良質な公共サービスの提供が可能なPFI手法も、魔法の杖ではないので、やはりデメリットもあります。

 まず、当たり前のことですが、その事業の持続可能性をしっかりと分析する必要があります。民間企業の経営ノウハウを活用するといっても程度がありますので、収益活動の部分において、どの程度の収益が見込めて、それによりどの程度の事業コストが削減できるのかを十分に分析しなくてはなりません。
 また、設計・建設・維持管理・運営など事業全体を一体的な計画を策定する必要があるので、契約までに時間とお金がかかります。さらに、計画段階からリスク処理の明確な対応方針を決定して事業に着手する必要があるので、綿密なリスク分析とそのリスクの官民での分担を検討しなければなりませんが、これが非常に困難な作業です。
 そして、長期にわたって民間企業が公共施設を管理運営することになりますので、きちんとその業績を評価(モニタリング)しなくては、長期の委託契約にみられがちな「サービスの劣化」が始まってしまいます。

 新こども病院もPFI手法を活用することが予定されていますが、医療行為は民営化できないため、PFI手法で民間事業者の経営ノウハウを活用できるのは、その周辺部分である施設の管理・清掃やリネン部門などに関することの予定ですが、上記のようなPFI手法のデメリットを踏まえてしっかりとその持続可能性を検討し、市の財政負担を最小化する必要があります。

 福岡市には、このようなPFI手法に関する分析が甘かったため、失敗した事例があります。
タラソ福岡 それは、臨海工場余熱利用施設整備事業(タラソ福岡事業)です。この事業は、市のごみ焼却処理施設「臨海工場」のごみ焼却に伴って発生する熱エネルギーを利用して発電し、それによって得られる電力を活用して温海水を利用するタラソテラピー、運動施設、地域コミュニティの交流促進施設などを、民間のPFI事業者が建設し、15年間維持管理・運営する事業です。建設した施設の所有権は、民間企業が保有するBOT(Built Operate Transfer)型のPFI手法です。福岡市で初めてのPFI手法を活用したこのタラソ福岡事業は、平成14年4月に事業を開始し、わずか約2年8カ月で破綻してしまいました。

(つづく)
【寺島 浩幸】

≪ 第27回「PFIはコスト削減の魔法の杖?(2)」 | 

<プロフィール>
寺島浩幸氏寺島 浩幸 (てらしま ひろゆき)
福岡県立修猷館高校、福岡大学法学部法律学科を卒業。1987年に福岡市役所入庁後、総務局法制課、人事委員会任用課、情報公開室係長、市長室経営補佐係長、議会事務局法制係長などを歴任し、2010年8月退職。在職中、主に法律関係の職務に従事するとともに、市長直属の特命業務や議員提案条例の支援を担当するなど、市長部局と議会事務局の双方の中枢業務を経験。
 現在は、行政書士事務所を開業して市民の身近な問題の解決をサポートするとともに、地域主権の要となる地方議会の機能強化を目指し、議員提案条例アドバイザーとしても活動中。

<主な実績>
・日本初の協定方式による第3セクターの情報公開制度の条例化
・日本初のPFI事業(タラソ福岡)の破綻再生
・日本初の「移動権(交通権)」の理念に立脚した議員提案条例の制定支援

▼関連リンク
寺島氏ブログ
・ツイッターは、コチラ


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