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進化する「iPhone」と戦うメイドインジャパンの奔走(3)~デジタル世界に生じた「格差」
特別取材
2011年11月 3日 07:00

 そもそも、今日のiPhoneブームの先駆けとなったのが、アップルが開発・販売する携帯型デジタル音楽プレーヤー「iPod(アイポッド)」である。「iPod」は、それまで最大でも100曲程度しか録音できなかったCD・MDプレーヤーの次世代機として2001年に発売された。5GBのストレージに約1,000曲を保存し、なおかつパソコンで音楽ファイルを管理することができる便利さが徐々に市場に受け入れられ、03年頃から急速に普及した。

 一方、同じ時期、「iPod」と同じように急速に普及したデジタル機器がある。デジタルカメラだ。デジタルカメラは、従来のフィルムカメラよりも、経済的かつ手軽で、市場に多いに受け入れられた。

 従来の方法にイノベーションを起こして大ヒットしたという点で、「iPod」とデジタルカメラは非常に良く似ている。しかし、その後の運命には大きな格差が生まれてしまった。国内の大手主要メーカーは、競うようにデジタルカメラの画素数やバッテリー性能の向上、製品の小型・低価格化を推し進めたが、「iPod」は、それを横目に劇的な進化を遂げていく。

 「iPod」は、発売当初アップル社製の「マッキントッシュ」のみに対応していたが、すぐにウィンドウズパソコンにも開放された。また、洗練された専用の音楽管理ソフト「iTunes(アイチューンズ)」を無料配布することで、ユーザーの囲い込みに成功。その後、写真の閲覧機能や、ゲーム機能、動画再生機能などを搭載させ、着実に「iPhone」へと繋がるロードマップを歩んだ。
 「iPhone」は、「iPod」時代から培ったテクノロジーを発展させ、常に進化し、壮大で確かな計画の元に生まれたと言え、ジョブズ前CEOの先見性と天才的なビジネスセンスが垣間見える。

 反面、デジタルカメラに同梱されている専用の写真管理ソフトは、使い辛いものが多い。まず、ソフトウェアは、英語で考え、設計されるのが好ましい。元来、デジタルというのはオンかオフ、イエスかノーかの世界であり、合理的かつ理論的でなくてはならない。わびさびなど、入る隙間が少しもないのだ。親切過ぎる日本人が創りだすソフトウェアは、ついつい複雑になりがちである。また、「画素数」「大型液晶」「手ブレ補正」など、時代とともに注目される機能が移り変わってきたものの、「iPhone」が歩んできた進化とは、ずいぶん異なる。そして、皮肉なことに、高性能なカメラが付いたスマートフォンに、そのシェアを奪われつつあるのが現実だ。

 もし、「iPod」がストレージの大容量化や、バッテリーの高性能化、端末のスリム化だけを目指していたら、現在の「iPhone」は存在しなかったと断言できる。
よく似た環境で普及しながらも、まったく別の運命を辿った「iPod」とデジタルカメラ。どんな分野でも、一定の割合を超えて普及した時に、市場は必ず飽和状態になり、拡大規模は、頭打ちになる。そして、そのような状態でも生き残れるのは、常にそのための進化をするモノだけだ。
 そう考えたとき、日本の主力産業のひとつに大きな危機感を感じる。

(つづく)
【清水 秀生】

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