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"悠香問題"から見えた広告代理店業界のウラ(後)~新規と既存客開拓の使い分け
特別取材
2011年11月16日 07:00

 "悠香問題"がクローズアップされるなか、広告代理店および媒体社(新聞社やテレビ局など)に対しても、その責任を追求する声が上がっている。しかし、当の広告代理店業界は、食品の成分や副作用までは関知できないと言わんばかりに、"我関せず"の姿勢を取っている。広告代理店が取り扱う多くの企業のなかには、いわゆる問題企業もある。そして、それらの企業に対しては、今回の悠香の件と同じような姿勢を貫いている。本当にそれで良いのか―。この問題を検証した。

<新規と既存客開拓の使い分け>
 「通販業に力を注いでいる企業の多くは、新規顧客開拓用の広告代理店と初回購入した人(既存客)向けの代理店を2つ使い分けています。前者の新規顧客開拓にはほとんどがテレビ局向けの大手代理店で、既存客向けはフリーペーパーやDM、チラシなどを制作する印刷会社系の代理店に頼むという具合です。既存客向けはフリーペーパーを発行する出版社に直で取引しているところも多いようです」(B社担当者)。

 「とにかくテレビ局のCMは、良い時間帯の枠の争奪戦になります。ターゲットが主婦やお年寄りの場合は平日の朝に報道番組中のCMを購入したりするのですが、依頼主(クライアント)の多くは安くて効果のあるスポットを求めます。費用対効果の高い枠をどのようにして確保できるかが、広告代理店営業マンの腕の見せ所になりますが、良い枠は大手がほとんど取ってしまうため、中堅の代理店は厳しい。なので、新しい切り口で見せるといった工夫を凝らしています」(A社担当者)。

 このように、通販業界においては特殊な事情があるようだ。
 通販業界の売上高は09年度の統計で推計4兆3,100万円と毎年右肩上がりの成長を遂げている。同業界の広告費の総額を明確に記した資料はないため推測にはなるが、売上全体の2割近くを広告費に充てた場合、8,620億円は広告費に投じている計算となる。

 電通が毎年発表している日本の総広告費は10年度で5兆8,427億円。これに当てはめると、およそ15%を通販業界が占めている計算となる。新興企業が多いとはいえこれだけの割合を占めていれば、広告代理店やテレビ局をはじめとしたマスメディアの対応は変わっていくだろう。大手広告代理店の間でも最大手の電通が1社で集中して買い付けを行ない、他社を大きく引き離す事態が生じたことで02年に博報堂を軸にして大広、読売広告社の3社で媒体の共同購入を実施。翌03年には博報堂、大広、読売広告社のメディア部門を分割移転し03年10月に(株)博報堂メディアパートナーズを設立。電通に対抗している。これは通販業界向けの広告においても博報堂が電通に比べて弱かったことから、通販業界の広告に強い大広や読売広告社を取り込むことで電通に対抗するといった指摘もある。いわば通販業界が、広告代理店業界を再編するキッカケをつくったとも言える。

<影響の大きさを考慮すべき>
 通販業界のテレビCM、チラシを見ても感心するほど、訴求努力をしていることが良くわかる。「今ならお試しでたったの1,000円」「もう2パックお付けしてなんと半額。さらに枕もプレゼント」「今から30分限定で...」といった購買意欲を掻き立てるキャッチコピーのほか、有名芸能人が登場し、派手なリアクションを用いて商品を紹介している。これらを見て、思わず「購入したくなった」もしくは「購入した」ような人も多いだろう。

 惹きつけられるのは商品の機能性もあるだろうが、価格の部分も注目される点である。仮に前述の通販会社が売上高の2~3割を広告費用に使ったとしても、テレビCMの広告費用や人件費などを引いても利益が十分に残る。店舗で物を売れば店舗の家賃、人件費が余計にかかる。場合によっては万引きのリスクもあり、利益が読みづらい。これに対して通販業界は注文があった分だけ配送でき、ロスもなく、店舗も構えなくて良いことから利益率は相当なものになる。それ故に通販業界がこれだけ成長産業になっているわけだが、今後、今回のような健康や生命の危機をおよぼすような事態が発生したとき、悠香の案件ように広告代理店はまた知らん顔をして通せるのだろうか。

 情報を発信するメディアの責任のほか、枠の買い付けを行なう広告代理店の責任は本当になかったのか。いずれにせよ、宣伝する側は商品についてもっと関心を持たなければならない事態になったことは間違いない。

【矢野 寛之】

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