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「北九州銀行」を誕生させた山口FGの歴史(41)
発信!北九州
2011年12月26日 07:00

<山口銀行前身、第百十銀行の沿革(41)~三菱銀行系から三和銀行系へ(3)>

 引き続き、日本銀行考査局の総裁あて報告書「山口県下合同銀行ニ関スル件」を記述する。

 (注)百十に対する三菱と三和の関係は 大正二年同行が不況の際、時の総理桂公の声がかりにて三菱の豊川良平に救済を求めたるが 三菱は自行丈にては肯ぜず 時の山口銀行(大阪ヲ本店とする銀行で、三十四、鴻池銀行と合併して三和銀行となる)と共同にて関与するに至りたるものにて 両行は深き関係を有するものなり 従って三菱が百十銀行株を処分するとすれば 先ず三和に話を為すを当然とするなり 三菱が今回百十より手を引くに至りたるは 恐らく第百銀行合併したる結果、従来に比し地方銀行との関係に於いて非常なる立場上の変化を来したるに基くべし 之に反し三和現在の立場は可成地方銀行を吸引し度き事情にあるを以て此の相談は直に成立したるが如し
ニ、之等の事情よりして三和をして山口県下より手をひかしむることは 一層困難となりたるのみならず 従来より功績もあり 且つ今回合同する銀行中、特に中心となるに足る銀行もなきを以て従来より十分事情に通ずる三和銀行に或程度の面倒を見て貰ふことを適当とも考えたり
~以下省略~
 これによると、大蔵省が山口県下全銀行の統合について、いつ三菱銀行に話を持ち出したかは不明であるが、三菱銀行が簡単に百十銀行から手を引いたことに大蔵省は意外感を持っている。一方、日本銀行は、この統合話の前に三菱銀行と三和銀行の間で百十銀行の株式譲渡、つまり経営権の委譲の決着している現状から新立銀行が三和系になることは例外的にやむを得ないとしたが、あまり好ましく思っていなかったようである。そして三菱銀行側の事情としては第百銀行との合併問題、三和銀行側の事情としては地方銀行との結び付きを求めていたとしている。
 この三菱銀行と百十銀行との合併は、~中略~ 結局、三井銀行と第一銀行の大合同による帝國銀行の設立に平仄を合したものであったのかもしれない。その意味では、同時期に行われた安田銀行と日本昼夜銀行の合併も同じではないかと考えられる。しかも三菱銀行の場合、合併準備期間も短く、第百銀行の方が店舗数も行員数も多い状態での昭和18年の合併で、百十銀行あるいは山口県下銀行統合の面倒までみきれない状況であったのではなかろうか。一方、三和銀行の場合、~中略~ 15,6年頃より企画課が中心になって地方銀行と関係を深めることになったとあり、以後関西地方の多くの銀行の営業譲受、あるいは合併を行っている。このような積極方針をとっている時に、東京では都市銀行の大合同が進み、大阪でも同様に当局からの働きかけがあったものの、三和および住友銀行はともに合併反対で押し通している。三菱銀行および三和銀行の社史から、当時の両行の置かれた状況と上記の日本銀行考査局の報告書を読み合わせると、この間の事情が自ずとみえてくる。
 こうして百十銀行は三和銀行系となり、その関係は合併後の山口銀行に引継がれた。

(出典:山口銀行史)

 この日銀考査局の資料からわかるように、当時においても大蔵省が銀行の合併に対して大きな役割を果たしていたかがわかる。東京は監官庁のお膝元であり銀行合併は当局のシナリオ通り進んだが、大阪は商人の町であり、監督官庁に逆らう気風がある。三和銀行と住友銀行との合併は双方の反対で破談になっている。

三和銀行本店.jpg 1943年(昭和17年)頃に始まった大銀行の合併が第一次とすれば、バブル崩壊後の金融危機に直面した都市銀行同士の合併は、第二次と言えるのかもしれない。百十銀行が存続銀行となり、山口県下5行合併により1944年(昭和19年)3月31に誕生した山口銀行は、三菱系から三和銀行系になる。しかしその三和銀行は東海銀行との合併を経てUFJ銀行となるが、2006年1月1日付で三菱東京UFJ銀行となり、吸収合併されている。

また、第一銀行と三井銀行は合併し帝國銀行となるが、戦後第一銀行と帝國銀行に分離。第一銀行は、日本勧業銀行と合併し第一勧業銀行に。その第一勧業銀行も富士銀行と日本興業銀行と合併し、現在みずほ銀行となっている。帝國銀行から改称した三井銀行は太陽神戸銀行と合併しさくら銀行となるが、住友銀行と合併して三井住友銀行となり、再度三井の名を復活させている。

 戦前からの名が残っている銀行は、いずれも財閥系の三菱、住友、三井であり、バブル崩壊後の1990年代後半から2000年代の初めにかけての金融再編が如何に大きなものであったかを物語っている。

(つづく)
【北山 譲】

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