<エネルギー地産地消の大きな取り組みへ>
佐藤 エネルギーの地産地消を行なうことの可能性は非常に高く、糸島地区はそういった取り組みをすべき地域だと思います。小さな規模でバイオマスなどを実験的にされている方もいらっしゃるのですが、行政が方針を出しているわけでもありませんし、糸島地区が自然エネルギーのメッカになるような雰囲気にはなっていません。
本来はそういう方向になってもおかしくないのですが、県が指導しているのは水素関連を実験的に取り組むことくらいです。それも必要だとは思いますが、実用化には時間がかかるでしょう。たとえば水素自動車でいうと、ステーションの問題があります。現状と違うシステムで水素ステーションをつくらなければなりませんし、そうなるとすぐに普及は難しいでしょう。住宅関係では、1つのエリアで別の水素発電を活用した団地はできるかもしれません。水素も太陽光と同じような手法ですね。いろいろな提案が組み合わさっても、まったくおかしくないと思います。
宇都 よくテレビで「スマートコミュニティ」という言葉を聞きますが、まずはそういった取り組みをするべきでしょうか。
佐藤 するべきです。もう1つの大きな問題は、地方を中心に遠隔地が縮退していっていることです。「限界集落のなれの果ては撤退」です。
また、世界の環境デザインから見た場合、原発の事故などもあって、今までの社会などの仕組みを根本から変えなければならない時代に来ていると感じています。今の電力システムは、発電所から何百kmも離れたところに送電していますが、そうすると当然ながらロスが発生します。さらに、電力を起こす場所と消費する場所が違うので、問題が起こった際にどちらのせいかという論議も生じてきます。しかし、その距離が縮まれば、そのエリアで起こったことはすべて自分たちの責任となります。原発事故で人口流失した都市の再生時に、エネルギーの手法があるのか、従来通りに送電線を引っ張ってくるのか、などを考えるべきです。
つまり、可能な限り自己完結できるようにすることが、将来に備えた電力の在り方だと考えています。災害や事故などが起きた場合にも、いろいろと切り離して修復していけばいいからです。たとえば、マイクロ水力発電というものもありますが、これは小川くらいの水力を利用した、3kw/h程度の電力を得る小規模の発電システムです。このシステムは、すでに導入している地域もあるそうです。
宇都 太陽光パネルでの発電でも、最低3kw/hほどあれば、普段の生活には支障ないとも聞きますね。
佐藤 大げさな言い方をしますと、自分たちが住んでいる自治体で、電力の自治、食べ物の自治など、ほかに依存せずにコントロールできるようになればベストだと思います。実現は難しいでしょうけれど、そういった案をこれから考えていくべきではないでしょうか。
宇都 そうすると、そこに自然と雇用が生まれてくるというわけですか。
佐藤 そうです。そうなれば、ほかに左右されず、自分たちの生き方は自分たちで決定できるという、1つの小さな単位が生まれてくるのではないでしょうか。
宇都 日本は雇用の問題を抱えていますが、「QBC」という全国にある工務店の会から「太陽光発電と設置について話をしてくれとの」との依頼を受けて、大阪で開かれた講演会に参加したことがあります。そこで、京都にソーラーを勉強する学校が新設されていることを知りました。「新しい事業のため、雇用が生まれました」とそこの講師の方が話していましたが、太陽光関連だけで新たな雇用が生まれたという事例を聞くことができました。
佐藤 ソーラーと言えば、数十年前に太陽光を利用した単純な構造の温水器がありましたね。重量の問題はあるのですが、効率は良いですから、直接熱をどう取り出すかということと並行して技術開発を進めていけば、問題はないでしょう。
宇都 ごく一部ですけれど、その動きはあります。太陽を電気に変えるための効率はまだ14~15%と低いのですが、水を温水に変える場合は90%以上の高い効率で変換でき、ムダがないのです。これからは、そのような高い効率を持ったクリーンエネルギーを、個々で保有する時代へと変わっていくのではないでしょうか。
(了)
≪ (中) |
<プロフィール>
宇都 正行(うと・まさゆき)
1944年、鹿児島市生まれ。68年、鹿児島経済大学卒業後、父の経営する「宇都建設」に入社。75年、「栄住産業」を個人創業し、76年に有限法人化。79年、福岡市に本社移転。87年、株式会社に改組し、代表取締役に就任した。趣味はゴルフと旅行。
<プロフィール>
佐藤 俊郎(さとう・としろう)
1953年生まれ、九州芸術工科大学、UCLA(カリフォルニア大学)修士課程修了。アメリカで12年の建築・都市計画の実務を経て、92年に帰国。「株式会社環境デザイン機構」を設立し、現在に至る。「NPO FUKUOKAデザインリーグ」理事、「福岡デザイン専門学校」理事なども務める。
※記事へのご意見はこちら