世界的な経済不況が続く中、シンガポールの観光産業が、ここ2年、急上昇中だ。長期的なスローガンのもと、観光産業を国家戦略として発展させてきた。2010年の観光収入は、188億シンガポールドル(約1兆2,220億円、1シンガポールドル=65円)をたたき出し、国内総生産の6%にまで達している。今や、シンガポールにとって欠かせない産業に成長した。
東日本大震災の風評被害などで打撃を被っている日本の観光産業。参考にできる部分が大いにありそうだ。
<カジノの成功でラスベガス超え>
マーライオンのある公園からマリーナベイを振り返ると、世界最大級の観覧車シンガポールフライヤーが目に飛び込んでくる。その右手には、前衛的な建築。勇壮な3本のビルに大きな船を乗せたようなその姿は、さながら近未来。米系のラスベガス・サンズが、シンガポールに建てたマリーナ・ベイ・サンズ(MBS)だ。
2009年、シンガポールに入国した外国人の数は約968万人だった。2010年には約1,163万人に跳ね上がっている。2011年も、前年同期比で概ね14%上回っている。中でも日本からの訪問客は前年比約24・3%増と大きく伸ばした。(データ・シンガポール政府観光局提供)
この観光客数の上昇には、カジノの成功が大きく関わっている。2010年に、MBSと、セントーサ島のリゾート・ワールド・セントーサに、2社のカジノがオープンした。その売り上げは、開業2年にして早くも本場ラスベガスをしのぐ勢いだ。
2社のカジノは、戦略的に客層のすみ分けを行っている。セントーサ島は、ここ2年で大きく様変わり。カジノに隣接してユニバーサル・スタジオ・シンガポール(USS)が入っており、こちらは、ファミリー向け。MBSは、付近にコンベンションセンターなどが集まっており、ビジネスマン向け。それぞれがターゲットを絞っている。
以前は、「マーライオン」が主な観光地だったが、国家のビジョンとして、名所を創出している。
国土の小ささを嘆くのではなく、創り出す―。これがシンガポールの強さだ。
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