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脱原発・新エネルギー

玄海原発を考える(12)~複雑になればなるほど
脱原発・新エネルギー
2012年2月20日 16:00

 複雑さと安全性とを天秤にかけてベストバランスを考える。設計を担当された方々のご苦労はすさまじいものだったと思う。発電をするために必要な系は少なくとも必要だ。それに加えて万一の備え、たとえば非常用炉心冷却装置(ECCS)や非常用の排気弁(ベント)なども備えつけなくてはならない。

 安全のためにつけるさまざまな装置によって、どんどん複雑さが増してしまい、リスクが高まってしまうことになる。そのリスクを回避するためにさらに複雑さを増す。まるで長い爪でばんそうこうを貼ると新たに傷が生まれてしまい、またばんそうこうを貼るような、イタチゴッコの様相を呈するのである。備えれば備えるほど複雑になり、複雑になるほど想定内外のリスクは高まる。ヒューマンエラーも起こりやすくなる。

 これが原子炉という地域に壊滅的なダメージを与える可能性のある施設でないのなら、そこまで考える必要もないのかもしれない。放射性物質を扱う巨大湯沸かし器だから必要な対策ということならば、これも原発特有の事情と言える。

 福島で痛ましい事故を発生させた原発は、玄海原発に比べて「単純な」構造を持つ沸騰水型だった。大きく言うと一つの輪と非常用の系しかない。

genkai.jpg しかし、玄海原発は二つの輪を持つ加圧水型だ。放射性物質を閉じ込める意味では実によく考えられた構造をしている。核燃料から熱を受ける一次冷却系は完全に他所と分かれていて、封じ込めがなされている。しかし、先にも述べたようにタービンを回すには蒸気が必要で、そのためにはもう一つの輪に熱を伝えなくてはならない。それが蒸気発生装置である。

 二つの系を持つがゆえに得られる安全性と、皮肉にも高まるリスク。ジレンマとしか言いようがない。ちなみに、二次冷却系でトラブルがあった場合は、そこまで心配することはないが、一次冷却系でのそれは致命的(文字通りの意味で)欠陥につながる可能性を秘めている。ニュース発表などは、その点を注意して見てほしい。

 ここまでの指摘は、実は原発がつくられる以前から言われ続けていることなのだ。分かっていることなのに私を含めた市民の多くが知らなかったという事実。この一事をとっても、いかに無知だったか、また、無知のままにされ続けてきたのかがわかると思う。

 電力会社、国、関係者は、言うならばセールスマンだ。自社商品を悪く言うはずがないし、その必要もない。したがって、無知たらしめられたこと自体は悪ではない。問題は反対意見を出さなかったメディア、言えなかった専門家にあろうと思う。反対意見を叫ぶ専門家も少数いらっしゃるが、いかんせん声を拾うマイクがなかったのだ。これでは議論のしようがない。与えられる情報はセールスマンからのものしかないのだから。

【柳 茂嘉】

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