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パナソニック社長交代劇の舞台裏~経営戦略「軒を借りて母屋を取る」の失敗で7,800億円の赤字に
特別取材
2012年2月29日 15:22

 28日、パナソニックは大坪文雄社長(66)が会長に就き、後任に津賀一宏専務(55)が昇格するトップ刷新人事を突然発表した。6月27日に開く株主総会後の取締役会で正式に決まる。

 中村邦夫会長(72)は相談役になり、創業者・松下幸之助氏の娘婿で2代目社長を務めた松下正治名誉会長(99)とともに取締役も退任する。
 今月3日、2012年3月期連結決算で過去最悪となる7,800億円の巨額赤字に陥る見通しを発表したあとも、首脳からは「現体制でV字回復を目指す」との声が聞かれ、続投方針かと思われていたが、巨額の赤字に対して株主など社内外から経営責任を追及する声が、日増しに高まったことから、急きょ交代の決意を固めたものと見られている。

0229_tugasi.jpg 津賀氏は大阪府出身で、大阪大学基礎工学部を1979年に卒業し、松下電器産業(現パナソニック)に入社後、情報技術の開発分野を中心に歩み、昨年4月専務に昇格。デジタル家電部門のトップに就任していたおり、創業家以外ではもっとも若い社長となる。
 パナソニックは10年ほど前、中村社長時代(2000~06年)の02年3月期(ITバブル崩壊時)にも、やはり4,300億円の赤字を出している。そのため、中村社長は大規模なリストラや、松下電工の子会社化による、製販一体による合理化などの改革を進めて業績を回復させた。その後を受けた大坪氏もその路線を引き継ぎ、松下電器産業からパナソニックへの社名変更や三洋電機の買収などを手がけていたが、歴史的な円高や半導体の不振などの経営責任を取り、社長の座を退くことになった。

 パナソニックは創業者の松下幸之助氏が死去した1989年(平成元年)頃から、「屋上屋を架す」企業体質となっていたツケを、2002年3月期、当時の中村社長が大規模なリストラで切り抜けている。
 つまりパナソニックは、他社が売り出した製品が売れると見るや資金力にまかせて大量生産し、市場占有率を高める経営戦略を取ってきた。いわゆるリスクを負うことが少ない二番煎じ商法である。それが裏目に出たのがプラズマテレビ事業への過剰投資だと言われている。

 また、電池部門強化のための三洋電機買収は、自社に開発能力がなかったからだと言われている。いずれにせよ10年後に過去最悪の赤字に陥ったのは「軒を借りて母屋を取る」経営の失敗だと言われている。
 新体制でV字回復を果たすには、経営の柱に位置づける「まるごと」だけではなく、韓国勢などに対して劣勢な状態が続くテレビなど中核事業を立て直すことが急務であり、また思い切った投資による独自製品開発、特に環境関連事業の強化による安定的な収益力の回復など、次期社長の津賀氏には、待ったなしの難しいかじ取りが求められている。

【北山 譲】

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