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【世界に誇れるニッポン】 根気強くモノにした東レの「炭素繊維複合材」(2)
特別取材
2012年3月30日 10:37

<金属から炭素繊維へ「材料革命>
 炭素繊維が素材の50%を占めるボーイング787が離陸した瞬間、航空機産業においては、その材料が、鉄、アルミなどの金属から炭素繊維複合材へと移行する"材料革命"が起こった。
 71年に東レが商業生産を始めた後、アメリカやヨーロッパの企業もこの市場を狙って、炭素繊維の開発、商業生産へと乗り込んできた。シェアを取ろうと目論んでのことだったが、どの企業も結果、失敗。撤退した。長い糸を端から端まで同じ品質にするのは非常に難しく、高度な技術が必要だ。コストもかかる。生産量を安定させ、常に高い品質を保つのは至難の業。欧米の企業は、利益を出せず、「モノ」にできなかった。
炭素繊維複合材 欧米の企業には2期連続で赤字になったらすぐに撤退を決めるなど、ドライな経営をする企業が多かったのに対し、東レ、帝人など日本の企業は粘り強く、「この事業をモノにするんだ!」という強い意気で臨んでいた。先駆けてこの事業に取り組んでいたという利点もあった。東レ、帝人、三菱レイヨンの日本の3社は、元々が繊維メーカーであり、アクリル素材などの繊維のハンドリングを得意としていた。その点も欧米の企業に比べると、有利だった。アクリル原糸の製造から、アクリル繊維の焼成、樹脂と組み合わせて炭素繊維複合材を製造するまでを一貫して行なえる技術力が、製品の競争力に直結した。
 それに加え、日本の企業は、欧米の企業とは違い、顧客に対して繊維を売るだけでなく、加工の仕方から、その用途に至るまでを、トータルにサポートした。糸を製造し、加工するところまでやり、使い方まで念入りに考えて、「こういう使い方がありますよ」と提案して回った。東レは、長い間、繊維産業で培ってきた高度な技術を駆使し、パイオニアとしての道を歩いていくことになる。
 炭素繊維は、まず、とっつきやすい、ゴルフシャフト、釣りざおなどに使われた。その丈夫さが立証されると、産業用ロボットの部品、さらにはロケット、人口衛星などに用途が広がった。
 航空機は人の命を運ぶものであり、安全性が究極まで証明されないと、部品には採用されない。壊れれば墜落の危険性が高まる主翼、尾翼などには、安全性の確認に相当の時間を費やし、厳格な基準をクリアしないと採用されることはない。
 鉄に比べると、「軽くて、さびない」ということで、まず、飛行中に壊れることがなく、飛行に影響することのない2次構造材に使われた。75年に、ボーイング737で採用され、内装材として0.1トン使用された。
 ここから東レは、ボーイング社とやり取りを重ね、炭素繊維の技術を研鑽。信頼関係を築いていった。

(つづく)
 
【岩下 昌弘】
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