50キロ圏内となると、福岡市の都市部まで含まれてくることになる。北は壱岐市、西は平戸市、南は鹿島市、そして東は福岡市早良区までが対象となる。風がどこに吹いたとしてもそれぞれの場所で風評も含めて多大な被害をこうむることになるのだが、人数規模として最大の被害となる可能性があるのは西風が吹いた場合、すなわち福岡市方面に風が吹いた場合である。
福島のケースにならい、幅15キロ、長さ50キロ(福島の場合は飯舘村の端までで40キロあまり。今回の想定はマージンをとって50キロとする)で西北西に帯を引いた場合、糸島市がほぼ全域、福岡市は西区、早良区はほぼ全域、城南区の一部が範囲に含まれることになる。糸島市は人口9万9,000人、福岡市西区が19万6,000人、早良区が21万3,000人、城南区が12万9,000人(全域が避難対象地域となった場合。50キロ圏内は、そのうちの一部)となっている。この帯のなかに入るであろう人数は63万7,000人になる。
20キロ圏内の12万4,000人と合わせると、なんと76万1,000人にも及ぶ避難者が発生することとなるのだ。福島で現在避難を余儀なくされている方々が、実数はわからないものの把握されているだけで9万人あまりと言われている。それに比すれば、どれだけのスケールになるか想像できる。
避難者が出るということは避難者のための生活スペースが必要になるということだ。それは、たとえば仮設住宅のようなものであったり、公営住宅のようなものであったり、民間のマンションなどの借り上げも必要になったりするだろう。福岡市に拡散した場合を考えると、76万人もの人々の住まいを用意するのはたやすいことではない。仮設住宅1戸に5名入居したとして、15万戸あまりが必要になる。仮設住宅の建築費が1戸あたり230万円前後(災害救助法では238万7,000円以内)であったとして、3,450億円が必要になる。すべてを仮設住宅で済ませるわけではなかろうが、住まいを用意するだけで、それだけの費用がかかることは覚えておいたほうがよさそうだ。
まとめると以下のとおり。
(1)20キロ圏内には12万4,000人が住んでいる。
(2)風向きが福岡に向いた場合、玄海原発から幅15キロ、長さ50キロのエリアのなかには63万7,000人が住んでいる
(3)仮設住宅の設置費用は1戸あたり約230万円。仮に(1)と(2)を合わせた人数76万人が仮設住宅住まいを余儀なくされるとすると、仮設住宅設置費用だけで3,450億円が必要となる。
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