<野村ホールディングスの不祥事>
野村ホールディングス(HD)は26日、渡辺賢一グループ最高経営責任者(CEO 59才)が31日付で辞任し、後任に永井浩二野村証券社長(53才)が8月1日付で就任すると発表した。
同時に柴田拓美グループ最高執行責任者(COO 59才)も辞任し、後任に吉川淳専務(58才)が就任する。尚、退任する渡辺氏は常任顧問、柴田氏は顧問となるが、野村は既に役員二人が退任しており、一連の増資インサイダーの問題によって経営陣の大幅な刷新を余儀なくされた。
野村証券社長からグループ全体を率いる野村HDのグループ最高経営責任者(CEO)に昇格する永井浩二氏は、81年(昭和56年)中大法卒、野村証券入社。09年専務、11年副社長、12年4月から野村証券社長。東京都出身で、営業の前線である大阪支店長、京都支店長など野村の大型店舗のトップを歴任しており、営業現場では永井氏のトップ就任を歓迎する声が上がっている。
野村証券社長も兼務する野村HDの永井社長は記者会見の席上「社会的使命感や倫理観が希薄化していた。新体制で修正する」と述べ、また「従来のビジネスモデルは非常に厳しくなる」」と話し、「改革を断行する」抱負を語っている。
今回 トップが辞任する事態になったのは、国際石油開発帝石が公募増資をするとの情報を、2010年の公表前に、主幹事証券会社だった野村証券の女性営業員が顧客である中央三井アセット信託銀行のファ¬ンドマネジャーに伝えたことが発端となった。
中央三井アセット信託銀行はインサイダー取引を行なったとして、証券取引等監視委員会に勧告されたことで、公募増資の内部情報は、野村証券から得ていたことが判明。
監視委員会の勧告を受けて、主幹事会社の野村証券は、「誠に遺憾であり、引き続き当局の調査に全面的に協力する」とコメントし、トップ交代については否定していた。
しかしその後の調査によってみずほフィナンシャルグループや東京電力の大型増資の際も株価が下落し、野村証券の社員による情報提供であったことが判明。その他にも社員から情報伝達された可能性が高いと判断される複数の事例が確認されたとしており、今後も調査を続けるとしている。
金融庁や証券取引等監視委員会は業界最大手の野村証券が増資インサイダーに関与していた事態を重視。野村の「内部からの自浄作用」を強く求めていたが、6月末に発表した調査報告結果と再発防止策は、当局を納得させるものではなかった。
その間、顧客である投資家や企業は野村との取引を次々と控える動きが表面化。特に大和証券と共同で準備していた日本航空の再上場で主幹事を統括する役割から外されるという深刻な事態に発展。ここまで事態が深刻化するとは思っていなかった首脳陣も、一連の不祥事のけじめをつけるためトップが引責辞任する事態となった。
証券会社には、本来、増資を担当する部署と営業部門の間で情報をファイヤーウオール(遮断)しているが、なぜ女性営業員が知っていたのか、野村証券の情報管理のあり方が問われている。
また証券会社は、海外の大口投資家に対して、増資の際などに事前に「どのくらい買うか」など聞く「プレヒアリング」を行なっており、これも不正取引の原因の一つとされている。
<大和証券グループの不祥事>
一方大和証券グループ本社は27日、傘下の旧大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)社員が未公表の増資情報を投資家に伝えていた問題で、日比野隆司社長、鈴木茂晴会長ら役員3人の報酬3カ月間、10%削減すると発表。
公表した報告書によると2010年の日本板硝子の公募増資について、機関投資家の営業担当部署の元社員が公表の4日前に社内情報を入手。米系ヘッジファンドの投資助言会社「ジャパン・アドバイザリー」(JA、東京都中央区)に電話で伝えていたと指摘し、情報管理に問題があったことを認めた。ただ「組織的に公募増資に関する情報を顧客に対して、提供していた事実は認められない」とした。併せて顧客の未公表情報を扱う際の業務手順の見直しや、不自然な株価変動があった場合は発行企業との間で増資の延期を検討することなどの再発防止策を発表した。
大和から情報漏えいを受けたJA社は、売買注文の発注を「エサ」に、他の証券会社に対しても公募増資などの未公表情報の提供を要求していたとみられ、金融庁は大手証券12社にJA社との関係を点検し報告するよう求め、証券会社と大口投資家との「癒着」の実態解明を急ぐことにしている。
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