<徹底的な見える化が理想か>
電力の理想を語れば、「見える化」の徹底だろうか。ここで、おそらくそうはならないだろうが、仮の話をする。たとえば、この夏の8月の1カ月分の電気料金の「値札」が、野菜と同じようにスーパーマーケットに並んでいて、普通の家庭の主婦が、その買いたいと思った「値札」を、レジに持って行ってお金を払えば、8月の1カ月分が、きちんと送電される。その「値札」には、どのような発電業者が、風力、太陽光、火力、原子力などどのように発電したのかが書いてある。それを野菜と同じように、スーパーで買える。そのような形が、電力自由化の理想だろうか。
仮にそのような形になったとすれば、脱原発を実現したいと思う消費者は、「原子力で発電した電気を買わない」という選択をし、意思表示をすることができる。
仮に、誰もが、火力で発電した電気の半値であっても、原子力で発電した値札(電気)買わないという「脱原発」の意思を行為で示せば、原子力はビジネスとして、市場競争に勝てず、自然の流れで淘汰されることになる。
現在では、東京に住んでいれば東京電力、九州に住んでいれば九州電力から一方的に買うしかいない。電力会社が、売る権利を一方的に握っているが、電力が、一般市民(消費者)の手元近くにまで下りてくれば、完全な自由化と言えるだろう。まだまだ、ほど遠いように思えるが、少しずつ、変わる兆しは出てきている。
<続々と登場する"新電力">
風力、洋上風力、地熱、シェールガスなどで発電を行なう新電力が、続々と出てきている。緩やかではあるが、独占状態を崩し、自由化の方向に舵が切られ、発電事業がビジネスとして成り立つことが示されたことで、ようやくさまざまな業界が、本気になって新しいエネルギー源を探しはじめている。
7月1日から再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度が施行された。これをきっかけに、さまざまな業界が、売電事業に乗り出している。王子製紙、日本製紙などの製紙会社は、紙媒体の衰退で業績は頭打ちだったが、新たな事業として、発電、売電事業に可能性を見出した。コンビニ大手のローソンは、太陽光発電のパネルを2,000店舗に設置し、店舗で使用するほか、売電にも参入する。
新電力(小売り自由化部門への新規参入者、特定規模電力事業者)には、製紙会社のほか、パナソニック、丸紅、オリックスなど53社が名を連ねている。現在、新電力のシェアは3.5%程度にとどまっているが、今後間違いなくシェアは拡大するだろう。
ソフトバンクの子会社SBエナジーの運営するメガソーラー(大規模太陽光発電)は、京都府、群馬県の2カ所で、運転を開始した。北海道、神奈川県など全国の各自治体では誘致合戦も始まっている。保守メンテナンスなど雇用創出に期待が寄せられている。
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