<小規模、地域分散型の可能性>
今後の電力システム改革のキーを握るのは、新電力だろう。50kW以上の高圧では自由化がすでに始まっており、新電力と契約する自治体が出ている。東京立川市の立川競輪場で、10年度に使用する電気に新電力を採用したところ、約3割(年間約1,700万円)の電気代節約に成功した。立川市では、競輪場のほかに、小中学校、図書館などでも新電力と契約し、行政コスト削減に努めている。
世田谷区では、この立川競輪場での電気代削減の成功をきっかけに、脱東電を目指す取り組みを始めた。区の本庁舎、小中学校など111カ所の電力を、NTTファシリティーズ、東京ガス、大阪ガスの3社が立ち上げた新電力のエネットから購入することを決めた。世田谷区の政策企画課の担当者は「昨年、東京では計画停電があり、世田谷区は計画停電の対象区域にはなりませんでしたが、何か起こった時のために東京電力以外にも選択肢を持っておく必要があるということで、新電力を導入することに決めました。経費も安いですし、原子力も使っていない電力ということで、エネットと契約しました。高圧以外でも自由化が進めば、家庭用にも使えるように今後、対応していきたい」と説明した。世田谷区では、この東京電力からエネットへの契約見直しで、年間約2,500万円の経費削減を見込んでいる。
<新電力への期待高まる>
技術、質、供給力の向上など課題は残っているが、エネット、住友商事が立ち上げたサミットエナジーなどの新電力への期待感は高まっている。自由化が家庭向けにも進めば、一般消費者にもメリットは多い。
小規模の地域で使う電力を供給できる業者が出てくることで、今後、エネルギーコストを削減するための選択肢が増えそうだ。ただ、現在は、業界全体の課題として、新電力を使用したいという需要に対して、供給が追い付いていないという現状がある。
これまで電力は、大規模、大手電力会社主導で進んできた。これらの電力自由化がいい方向に向かえば、小規模の地域で使う電力を、世田谷区のように、新電力から買うことも可能だ。技術革新が進めば、エネルギーの地産地消や、発電の際に発生する熱もその地域で使うなど、さらなるエネルギー効率のUPも期待できる。
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