原発依存度が大問題になっている。2030年の日本の電源をどうするか。それを決定するためにシミュレーションがなされ、3つのシナリオが用意された。全電源に占める原発由来電力の割合によってゼロ、15(%)、20~25(%)の3つである。この試算は大きく2つの要素でできているように読み取ることができる。ひとつはCO2排出量である。すでに示した通り、これは温室効果ガスの抑制という数少ない原発の優位点がモノを言う分野だ。これを引き合いに出すことには、なんとも言えない違和感がまとわりつく。そのCO2排出量がひとつ。もうひとつの大きな要素がコストである。原発依存度の高低が家計や経済活動に、どの程度の影響を与えるかを試算したものだ。
CO2の発生量は電源の種類と発生するCO2の割合で算数的に計算することが可能であるが、電気料金の高下が家計や経済にどの程度の影響を与えるかを判断することは、それほど単純なものではない。料金が上がれば、皆が素直にそれに応じるということではないからだ。たとえば、電気料金が月1万円が2万円に上がったとすると、家計は1万円分圧迫されることになる。これはもったいないと言うことで、家庭では、より積極的な節電を実行に移すことになる。単純に2倍になるわけではないのである。これが需要の価格弾力性と呼ばれるものだ。これをどう評価するかによって、生活コストは大きく変わる。経済活動も同じで、たとえば電気料金が上がれば、それに応じた変化も十分考えられる。
それゆえ、単純な足し算引き算ではないのだが、国家戦略室のまとめた原発比率ごとの家計(2012年現在1万円/月の電気代を支払っている家庭を想定)とGDPの試算によると、
ゼロシナリオ
:発電コスト・15.1円/kWh(現状+6.5円)
:家庭の電気代・1.4万円~2.1万円
:GDP・563兆円~628兆円
15シナリオ
:発電コスト・14.1円/kWh(現状+5.5円)
:家庭の電気代・1.4万円~1.8万円
:GDP・579兆円~634兆円
20~25シナリオ
:発電コスト・14.1円/kWh(現状+5.5円)
:家庭の電気代・1.2万円~1.8万円
:GDP・581兆円~634兆円
ということになっている。
ここから分かることは、どうやら原発を動かした方が家計にも経済にも優しいということだ。電気料金は活動の原価のひとつであるがゆえに、低ければ低いほどありがたいのは間違いない。そのうえ、1Wの電気は1円だろうと10円だろうと内容は変わらない。これでは安いほどよいと思うのも仕方がない。だが、万が一のときに損なわれる健康、土地、命はどうなるのか。金銭的な補償が受けられても、失ったものは戻らない。それを福島で学ばなかったのか。これらの数値がいかに正しく将来を示したものだとしても、福島の現状を見ると小手先だけの議論に感じられてしまう。
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