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福岡市PPPは地場企業の転換点(中)~PPPプラットフォーム
行政
2012年8月23日 07:00

<官民の課題>
 財政難によりPPP導入が不可避とも言える福岡市だが、これまでの実績は決して豊富と言えるものではない。これまで『PFI方式』(民設・民営)を導入した事業としては、2001年の「福岡市臨海工場余熱利用施設整備事業(タラソ福岡)」、11年の「福岡市新病院整備等事業」(福岡市立こども病院のアイランドシティ移転など)、そして、現在進行中の「(仮)第1給食センター整備運営事業」である。

 タラソ福岡は、同市のごみ焼却処理施設「臨海工場」のごみ焼却で発生する熱エネルギーによって発電した電力を活用して温海水を利用するタラソテラピーと、フィットネスジムおよび地域コミュニティの交流促進施設などがある。施設を建設した民間業者が、15年間維持管理・運営する計画であったが、02年4月の事業開始からわずか約2年8カ月で「全国初のPFI事業の破綻」として不名誉な話題になった。(同事業はその後、買い取り手となる事業者が見つかり、公費の負担なく4カ月後に事業再生を果たした。)
 また、同市の場合、業者の選定から発注までを事業所管局が担当することとなっており、老朽化施設の建て替えという何十年かに1度の事業である以上、事業所管局には経験がないものとして考えなければならない。

 一方で、今回のPPP導入においては民間業者サイドにも課題がある。それはPPP(PFI)の実績がある企業は大手に多く、福岡市の地場企業はほぼ皆無であることだ。また、公共施設建て替えへのPPP導入は、市が設計し、建設のみを発注する従来通りの公共工事を減らすことにつながる。
 同市は、「福岡に本社があること」を今回のPPP導入における業者選定の前提条件だが、実績や経験がない地場企業にとっては、公共施設の維持管理・運営までを担うPPPへの参加は、とくに建物の建設費用を負担する『PFI方式』(民設・民営)、『定期借地・床賃借方式』(民設・公営)においてリスクを負うことになる。また、事業計画から施設運営などにおいては、共同企業体(JV:Joint Venture)を視野に入れた異業種間連携も必要だ。

<PPPを学ぶ>
0823_siryo_3_s_2.jpg こうした現状をふまえ、福岡市は2011年6月に「福岡PPPプラットフォーム」を設置した。これは、地場企業のPPPに関するノウハウ習得と事業参画に向けた競争力強化を図ることを目的としており、11年度は6月から約2カ月おきに計5回のセミナーが実施された。12年8月7日に実施されたセミナー(12年度第2回)には、地場の建設、ビル管理、設計、デベロッパー、金融機関など88の企業・団体が参加(資料3)。地場の各業界を代表する企業も多数参加しており、関心の高さがうかがえる。また、「実践の場が欲しい」というリクエストに応え、九州大学が株主である(株)産学連携機構九州(本社:福岡市東区)が、10月に実践講座を開講する予定である。

 市としては、数多くのPPPを手がけていくために必要とされる経験の蓄積と、経験がない事業所管局への支援を目的として、財政局に「アセットマネジメント推進部」を設置。同部大規模事業調整課によると、地場企業を対象にPPPの研修そして選定を行なっていくことは全国初という。同課長は「福岡市のPPP事業で得た経験を基に他の自治体でも活躍していただければと思っています」と、期待を込めて語る。
 財政難の自治体は福岡市だけではなく、すでに各地でPFIは行なわれている。今後ますます全国レベルでPPP導入が進んでいく可能性は高く、福岡市のPPP導入を糧とすることは、企業の存続のみならず、将来性を高めることにつながるだろう。

(つづく)
【山下 康太】

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