<電力会社経営のため>
この夏、全国各地で電力不足が懸念されていたが、一定の節電効果もあり、原発が稼働していなくても電力は足りていた。電力会社の経営を黒字に持っていくために、大飯原発を再稼働させたといえなくもない。飯田氏は言う。「足りるのは、事前から分かっていた。見えすいた脅しのようなことをやってはいけない。2030年にどうなるかを議論する前に、今日、明日をどうするのかを議論する必要がある。ソリューションができていない状況で原発を強引に動かすのは、おかしい」。核燃料廃棄物の問題の解決策が見えないまま、原発を稼働させている現状に警鐘を鳴らした。
脱原発を進めた後、核燃料廃棄物をどのように片づけていくのか、という問題は深刻だ。どのようなステップを踏むのか。まだ見えない。
青森県上北郡六ヶ所村の六ヶ所再処理工場には、建設に約2兆円が投資され、フランク・フォン・ヒッペル米プリンストン大学教授のレポートによると、12~50年までに約3・2万トンの使用済み核燃料を再処理するのに、運転費用が約7・8兆円かかると推定されている。
今後、六ヶ所再処理工場ではMOX燃料工場の建設も予定されているが、核燃料サイクルは、原発の先進国でも実現できなかった。「絵にかいたモチで、現状では日本にはできない。再処理がだめなら、直接処分だと言っているが、解決策の選択肢の中には入らない。現実的には、乾式貯蔵しかない。乾式貯蔵がもっとも安く、5000億円ぐらいでできる。この方法が選択肢になるべき」と、脱原発に向けた現実的な出口戦略を提案している。
<段階的な脱原発を提唱>
さらに2年間のモラトリアムを持つべきだと提唱する。原発を動かさないモラトリアムの期間を作り、この原発をストップさせた2年間で、核のゴミを処理する際の安全性を高める議論を進める。誰もが納得する方向性を決めるための国民を巻き込んだ議論を徹底する。飯田氏はそのステップを、3つのフェーズに分けて説明した。「核のゴミをどこに置くのか。あとこの先、何万トンの核のゴミを出すのか。3万トン出すのか、4万トン出すのか。これらの問題を、徹底して国民とともに議論すべき。これが、第1のステージ。乾式貯蔵では、まず100年間、どこに置くかを決める。100年間、置いた後、最終的にどうするのか、というのが第2のステージになる」と、語った。
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