<エネルギーと地域の関わり方の未来>
1行政区が主導しての、自然エネルギーの発展は可能なのか。1地域とエネルギーとの関わり方は、今後どう変わるのか。
エネルギーの地産地消が地域、地域で進んでいけば、日本全体にとっては理想的である。たとえば、太陽光、洋上風力など、その地域で生産したエネルギーをその地域で使う。理想形としては、小規模分散でエネルギーを作る地産地消型。自治体、行政区がリードしてのエネルギー革命が進むという形は、現実的だろうか。
現状から言えば、国が主導し、大きな矢印を描かなければ、その実現は厳しい。成田勇臣・同区温暖対策課長は、「予算さえあればできないことはないが、現実的には、厳しい。自然エネルギーで全体の一部を作ることはできるでしょうが、その地域だけで生み出すことは不可能ではないか」と、自治体主導では厳しいとの見方を示す。
日本において現状、もっとも割合が高いのは火力発電だが、その設置できる場所も海岸部に限られる。「それぞれの地域で使うエネルギーを地域で作ろうと考えると、地域によって差がありすぎる。現在、火力発電所のある場所は、冷却する必要があるので、その多くが海岸。首都圏で言えば、埼玉や栃木に火力発電が作れるのか。そのことを考えると、完全な地産地消型が一朝一夕に作れるわけはない。国が全体の未来図を描く必要がある」と、分析する。
<地産地消型が理想だが...>
現時点の電源構成は、約88%が火力、残りの12%を水力、地熱など、自然エネルギーでまかなっている。100年、200年後の未来を考えた時、持続可能な社会にしていくには、風力、太陽光などにエネルギーシフトしていくのが理想だが、風力、水力などで一部を補うことはできるものの、完全な地産地消型への移行を短期間に実現するのは難しい。
約47万人を抱える江東区。「理想的なのは小規模分散型だと思うが、自治体がエネルギーの前面に出ていくことは難しいと思う。自然エネルギー発電にしても民間の受け皿がもっと出てきて、参入するメリットがあるのかどうか。仮に地産地消を目指すとして、大都市と地方都市では、それを実現できる都市とそうではない都市が出てくる。江東区にしても行政サービスを高めるためにほかにやるべきことが多く、どこの自治体も、手が回らないのが現実ではないか。そう考えた時、やはり国が明確なビジョンを出さなければ」と成田課長は話した。
風力、小水力などの自然エネルギーが担えるのは全体の一部ではあるだろうが、地域に合った自然エネルギーを模索していくことは、次の世代につながる大事なことではないだろうか。
≪ (5) |
※記事へのご意見はこちら