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中国から飛来するPM2.5による環境汚染問題(1)
未来トレンド分析シリーズ
2014年1月24日 07:00
国際政治経済学者/参議院議員 浜田 和幸 氏

 日中関係が戦後最悪といわれるほど、悪化の一途をたどっている。ただ、これは尖閣諸島や靖国参拝をめぐる政治問題が原因であり、両国の政治指導者が胸襟を開いて真摯に向き合えば克服できるものである。また、そうしなければ、日中双方にとって不利益をもたらすのみであろう。その意味で、両国が信頼と協力の絆を取り戻すための第一歩として、環境問題に目を向ける時ではなかろうか。

 というのも中国は、30年以上にわたる急速な開放・改革政策を追求した結果、今や日本を抜き、世界第2位の経済大国に躍り出た。しかし、その反面、深刻な環境問題に直面する事態に到っているからだ。全土が大気の汚染、水源地の枯渇、土壌の汚染に飲み込まれたといっても過言ではない。最新の中国社会科学院の調査によれば、「河川の43%の水は汚染がひどく飲み水としては不適格」とのこと。また、中国の政府機関である環境保護局曰く、「都市部の地下水の57%も同様に飲料に適さない」。

 よって、住環境のみならず、食料生産の面においても、安全性が問われる事態になってしまった。国民の間にも、環境汚染や健康被害がもたらす被害が蔓延し、不信と怒りの声が巻き起こり、政府に対する抗議行動が各地で年間20万件近く発生するようになっている。環境汚染は食料生産にも悪影響を及ぼし、かつては食料の輸出国であった中国が今では世界最大級の食料輸入国になってしまった。

大気汚染イメージ 2014年の新年を迎えた北京の町では、あちこちに巨大なLED照明のスクリーンが設置された。その目的がふるっているではないか。「このところスモッグで日の出が見えなくなってしまった。朝が来たことを知らせるために、太陽が昇る情景を映す」との通達である。これでは人間の体内時計も健康も狂ってしまうかもしれない。人間は環境の影響を受けるはず。中国人の意識がどのような影響を受けるようになるのか気になるところだ。

 さて、こうした急激な環境問題の深刻化をもたらした原因は複雑極まりない。経済発展に伴うエネルギー、特に石炭の大量消費もあれば、硫黄分の含有量が多い燃料の使用、工場や自動車から排出される公害への防止策の遅れなどが複合的に絡まっているものと思われる。もちろん、これまで中国政府は様々な法律や制度を講じ、対策に乗り出してはいるものの、事態は悪化する一方である。

 さらには、周辺国にも深刻な環境汚染をもたらし、国際的な問題にもなり始めている。たとえば、わが国においても中国から飛来する黄砂、酸性降下物、PM2.5など、様々な汚染物質が押し寄せており、日中間の政府間交渉の場において、常に避けて通れない課題となっている。
 昨年の夏には、富士山の山頂において、大気1立方メートルあたり、2.8ナノグラムの水銀濃度が観測された。滋賀県立大学の調査によれば、2007年以降、全国各地の高い山々の頂上周辺において、高濃度の水銀が観測されるようになったとのこと。同大学の長淵教授によれば、「気象条件も合わせて分析すると、中国からの汚染された空気が流れてきたことが原因とみられる」。

 また、富士山のみならず、鹿児島県の屋久島や、岐阜県と滋賀県の県境に位置する伊吹山の山頂付近においても高濃度の水銀が測定されている。これら高い濃度の水銀汚染が観測された日は、いずれも中国大陸から風が吹いていたことから、原因が中国にあることは動かしようがないだろう。

(つづく)

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<プロフィール>
浜田和幸氏浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。


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