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自立する地域社会

高齢者集う、サロン幸福亭誕生(後)
自立する地域社会
2014年2月20日 07:00
大さんのシニア・リポート第18回

 居場所というのは来亭する高齢者にとって、セカンドハウス的な意味を担う。ときには喫茶店だったり、映画館だったり、碁会所だったり、趣味の会だったり、居酒屋だったりと変身する。気分転換の場所と考えていい。そこに来れば、見知った友人に会え、たわいのない話に花を咲かせ、ときには信じられないような体験をした人とも出会えた。知的好奇心も刺激されるだろう。また、高齢者に必要な様々の生活情報や、命にかかわるような病気から身を守ることができるセーフティネット情報なども入手可能となる。当然ながら、干渉されたくない人、孤独の好きな人は利用しなければいい。

「サロン幸福亭」に来る人たち 「サロン幸福亭」を地域のコミュニティ施設と考えれば、より機能的に稼働すると考えた。最近、「地域で高齢者や生活弱者、障害者を支え合う」という常套句がいたるところで聞かれる。でも、「"地域"とはどの範囲を指すのか」というエリアが不明瞭なのである。街単位なのか、学区単位なのか、自治会・町内会単位なのか。何故エリアの確認が必要かといえば、そのエリアに住む誰が、何(誰)を、何のために、どのように担うのかを確認する作業が異なるからだ。これを明確にしないと、組織だけが存在して、それを実質的に運営する人間が存在しないということになる。

 「サロン幸福亭」の場合は明確である。答えは「サロン幸福亭に来られる人の住む範囲」ということ。運営は実行委員会形式やNPO法人化しての理事会などいくつかの方法が考えられる。「サロン幸福亭」の場合はオーナーが個人ゆえ、小回りが利くというメリットのほうが大きい。少人数で決め、即実行に移す。行政が絡むことで、かえって原則論が幅を利かせ、身動きがとりにくく、従って稼働率を下げる。

 面白い例を挙げる。わたしの住む街にも公民館がある。それを4年前、「まちづくりセンター」と名を変え、センター長と事務員が事務室に新しく加わった。公民館の職員との同居である。13カ所ある公民館すべての名称を変え、合計26名の職員を配置した。人件費と諸経費を加算すると、年間1億5,000万円を下らないだろう。問題は仕事の中身だ。「まちづくりセンター」というからには、地域を新しく作り変え、そこに住む住民を支援するという意味だと誰もが捕えた。
 ところがである。わたしが住むエリアのセンター長は日がな一日事務所にいる。退屈を耐えるほど困難なものはないと思うのだが、彼はそれを確実に実行に移す。見事なものである。自治会や町内会に街づくりのための提案もしなければ、方向性も示さない。彼が関わる街をどのようにしようとするのか、まちづくりセンターの役割そのものを認識していないのだ。

 前市長(民主党系)が設けたまちづくりセンターだったが、明確なコンセプトもなくスタートさせたことが徒となった。考えてみると、センターのある地区以外に住むセンター長が、他地区の街づくりに情熱を傾けるという事情もあるだろう。とにかく本腰を入れて仕事に取り掛かろうという気概に欠けた。
 基幹となるべき部署がこの体たらくである。関係部署への嘆願にもかかわらず、高齢者の「居場所」は依然として実現しないまま放置された。明らかに孤独死者だと思える死を、警察署は孤独死とカウントしない。孤独死解釈の線引きを厳しくすれば数字的には増えないことになる。それを元に、「孤独死者が少ない街」と宣伝されても叶わない。

選挙事務所 ついに意を決して立ち上がったのが3年前のことである。市議選立候補を決意した。立候補理由はただひとつ。「高齢者に優しいまちづくり」である。しかし、金などまったくない。ところが不思議なもので、呼びかけに応えてくれた全国に散らばる友人や、数少ないわたしの読者から、予想を越えるカンパが集まった。それを元に、「高齢者の味方です」を旗印にして選挙戦を戦った。
途中、千葉県松戸市常盤平団地自治会長の中沢卓実氏が応援に駆けつけてくれた。中沢氏といえば、「孤独死ゼロ作戦」を掲げて、全国を講演して回る孤独死に関する権威である。当然、街宣車からの連呼も、街頭演説も「孤独死をなくせ!」を叫ぶことになった。「孤独死はイメージが悪い。表に出さない方がいい」という支持者の忠告を無視して、その後も"孤独死"を連呼し続けた。結果はブービーでの落選。準備期間がほとんどなかったとはいえ、「孤独死連呼」が敗因のひとつと考えられる。でも、不思議に後悔の気持ちは湧かなかった。
 それから2年、事態が急変した。昨年2月、URの支社を通して突然、コミュニティ・サロンオープンの打診を受けたのである。オープンを許可したURの事情、オープンまでの経緯、問題点などは次回に譲りたい。

(つづく)

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<プロフィール>
ooyamasi_p.jpg大山眞人(おおやま まひと)
1944年山形市生まれ。早大卒。出版社勤務ののち、ノンフィクション作家。主な著作に、『S病院老人病棟の仲間たち』『取締役宝くじ部長』(文藝春秋)『老いてこそ二人で生きたい』『夢のある「終の棲家」を作りたい』(大和書房)『退学者ゼロ高校 須郷昌徳の「これが教育たい!」』(河出書房新社)『克って勝つー田村亮子を育てた男』(自由現代社)『取締役総務部長 奈良坂龍平』(讀賣新聞社)『悪徳商法』(文春新書)『団地が死んでいく』(平凡社新書)『騙されたがる人たち』(近著・講談社)など。


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