＜原発推進論とエネルギー転換論＞

　前回は、韓国の電力需要の状況と電気料金が安く抑えられた結果、エネルギーの電力化が起きていることをお話した。今回は、そのような状況下で、韓国ではエネルギー政策についてどのような主張が行なわれているかを見てみよう。

　去る2011年度に、電力問題と関連して全国民の関心を引き寄せた２つの事故があった。１つは、日本の福島原子力発電所の津波による事故であり、もう１つは11年９月に韓国で発生した循環停電事故である。
　その当時、李明博前大統領は原発を大きな国家プロジェクトの一環として推進しようとしていたため、福島原発事故の発生は原発の安全に対する不安感と「原発拡大推進は果たして大丈夫だろうか」いう懸念を国民に抱かせた。その事故の後、韓国でもすぐに停電事故があったし、その後に繰り返された夏場と冬場の電力不足問題は、原発に対する不安感を停電に対する不安感に置き換えた。

　このような環境下で現在、韓国では停電に対する不安と電力不足の解決策として、原発推進論とエネルギー転換論が提示されている。

　しかし、ご存知の通り、原発は計画から建設、稼動に至るまでに約10年の歳月が必要であるため、当面の電力不足の問題解決にはならず、10年後の需給などを考慮したうえでの決定になるだろう。
　原発推進論者は、今のように電力需要が増加傾向にある状況では、原発に代替できる安定的で安い供給方法はないことを強調する。それに原発は、二酸化炭素の排出もほとんどなく、化石燃料も減らせる方法であることも付け加える。

　一方、原発推進に反対するエネルギー転換論者は、需要の側面では電力需要を削減することと、供給の側面では原発と火力発電を縮小し、再生可能エネルギーに転換することを主張する。再生可能エネルギーは二酸化炭素を全然排出しないだけでなく、自然エネルギーを利用するので、原油高の影響も受けない有利な面があることを挙げている。

　しかし、原発推進論の場合、２つの課題があると思う。１つ目は電力需要に対応するため取った原発推進が、電力需要の増加を加速させる恐れがあることと、２つ目は原発は実際は原価はそれほど安くなく、いろいろな要因で安定供給を保証できない点である。

　１つ目の課題をもう少し詳しく説明すると、原発は政府の補助と支援によって原価が抑えられているのは、前回触れた。韓国政府が原発を優遇する政策をとった結果、電気料金は安く抑えられているが、その歪がエネルギーの電力化と電力需要の増加を誘発している一因になっている。このような状況下で発電原価が低く抑えられている原発を拡大すると、電気料金はもっと安くなり、油類と電気料金の開きはもっと大きくなる恐れもある。その結果、電力消費を抑制する要因が弱くなり、エネルギー電力化の現象がもっと進むかもしれない。

　２つ目の課題だが、すでに触れたように、原発の原価は政府の補助と支援のうえに成り立っている。即ち、実際の原価を厳密に考えてみる必要がある。
　原発は40年後くらい原発を閉鎖することになるが、その費用、それから廃棄物管理費用、放射性廃棄物の保管問題など、コストに入れなければならない費用がいろいろある。原発推進論者は、原発の安全性と原発の原価の安さを強調するが、現実には、福島原発事故を通じて原発は安全が保証されていない技術であることや、原価についても、トータル的に考慮すると今の原価計算とはずいぶん違うことがわかるようになった。

（つづく）

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