大阪ダブル選の勢いに乗り、国政へも精力的に働きかけている橋下徹大阪市長と地域政党・大阪維新の会。今や既成政党の政治家は戦々恐々となり、次期国政選挙をにらんで橋下氏の顔色をうかがっている感すらある。
橋下氏の躍進の理由について、断片的な報道では、発言や演説などでマスコミを賑わす派手なパフォーマンスにあると思いがちだ。しかし実際には、その人気を下支えしているのは、有権者との対話を重視した「草の根活動」にある。以下、関係者への取材や橋下氏の著作などをもとに、橋下氏の「発信力」について紹介する。
大阪府知事時代から、橋下氏はメディアへの積極的な姿勢を見せてきた。毎朝登庁時に報道陣からの囲み取材を受ける。時間は10分から30分。さらに週1回の定例会見では、質疑応答が白熱し、2時間を超えることもあったという。一つひとつの質問に真摯に応える橋下氏。大阪ダブル選における会見では、松井一郎大阪府知事とともに3時間を超えて報道陣からの質問に応えた。当確後、「本当の戦いはこれから」という言葉の通り、政策の一つひとつについて伝えた。
積極的に自分の考えを伝えるという姿勢は、メディアのみに向けられたものではない。2010年4月の大阪維新の会設立後から、週末にタウンミーティングを始めた。1日3回、有権者と向かい合って政策を訴えた活動は、大阪ダブル選の頃には700回に達したという。大阪府の職員に対しては、あらゆる話題に関する自分の見解を述べたメールを配信。自身の考え方についての理解を求めた。
当時、毎日新聞の記者として橋下氏を取材した田辺一城福岡県議会議員は、「橋下氏の躍進をテレビ出演などの知名度によるものと考えれば、見誤ることになる」という。田辺県議は、大阪維新の会が既成政党との戦いで初勝利した10年5月23日の大阪市議補選(福島区選挙区)の選挙戦について、勝因をいわゆる「空中戦」ではなく、有権者一人ひとりへのアプローチを重視した「地上戦」にあると分析した。
以下、毎日新聞10年5月24日夕刊から引用する。
一方で民主・自民・共産の既成政党陣営は知事に対する批判ばかり。それは大阪ダブル選でも変わらなかった。橋下氏の政治活動を間近で見てきた田辺県議は、地元の古賀市で、初当選した県議選の頃から有権者との対話集会を開いている。今年8月17日から9月10日まで、同市全8小学校区で計13回実施し、延べ数百人の有権者が訪れた。集会では冒頭に田辺県議から県政報告が行なわれ、その後は質問の時間。地域の問題だけでなく、橋下氏や大阪維新の会に関する質問も寄せられたという。
組織票に頼り、無党派層に無関心、挙句のはてには投票率の増加を懸念する政治家にとって『真の脅威』とは、徹底した草の根的な政治活動にほかならない。「風」といわれる不安定なものではなく、「土台」をコツコツと築き上げた橋下氏の『発信力』に、改革を志す者は学ぶべきではないだろうか。
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