成熟社会に適合した政治と行政の仕組みを構築していくための重要な観点は、みんなの党が掲げている「脱官僚」、「地域主権」、「生活重視」の3つのアジェンダです。
「脱官僚」とは、小さな政府、小さな行政という意味であります。つまり、行政の無駄をなくしスリムになるという意味と、「官から民へ、民でできることは民でやる」という2つの意味が含まれています。
さらに、国と地方との関係については「地域主権」です。
「地域のことは地域で決める」「自分たちでできることは自分たちでやっていく」という精神こそがまさに住民自治であり、真の民主主義の姿だと思います。
福岡市では、福岡市市民公益活動推進条例第2条第6号において、「共働」という言葉を、「相互の役割と責任を認め合いながら、対等の立場で知恵と力をあわせて共に行動すること」と定義し、市民やNPO、自治協議会を中心とした住民自治・地域自治に向けて力を注いでまいりました。この方向性は、成熟社会の到来を踏まえたものであります。成熟社会においては、公共という分野、パブリックという分野を行政だけで担っていくことは困難であり、市民、NPO、自治協議会、企業など多様な担い手と共働していかなければならないのです。
そして、このような「共働」を進めていくことによって、行政はこれまで中心的に担ってきた「地域が必要とする公共サービスを行政自らが提供していく」という「ボートの漕ぎ手」としての役割を、今後は「地域が必要とする公共サービスをコーディネートしていく」という「ボートの舵取り」の役割へと、その役割を大きく変えていくことが必要なのです。
このような行政の役割の変革による成熟社会型の地域経営を実現していくためには、なによりも行政の意識改革が必要となります。
意識改革に関して、私がとても印象に残っている事例をご紹介します。
電話やインターネットで注文を受けて食料品などを宅配する(株)阪急オレンジライフさんと、一般社団法人視覚障害者自立支援協会さんとが連携して、日常の買い物が困難なひとり暮らしのお年寄りや障がい者のために、食料品の宅配サービスとあわせて無料で安否確認を行なうという事業を展開しています。会費は、わずか月額210円です。
「民」のサイドでの、このようないわゆる「買い物難民」や「孤独死」の防止に向けた素晴らしい取り組みに対して、行政はしっかりと連携し、ぜひ共働して進めていくことが求められます。この取り組みに対して、福岡市は、国の補助金メニューを活用しようとしたところ、国の認定が出ませんでした。
しかし国がどう言おうとも、福岡市として、どのようにサポートするのか?という視点から検討すべきであると思いますが、この件について結果的に何もサポートしないことになってしました。
長く続いている現在の中央集権体制の下で、国政だけでなく、地方行政に関しても国が多くの権限と財源を握っている状態に慣らされることにより、いつしか地方公務員には、「おうかがい体質」が蔓延し、自分たちで決定していく意識が希薄になっているのではないかと強く感じます。
このような「おうかがい体質」を変革し、「地域のことは地域で決める」という意識改革を行なうには、地方自治法など法律を抜本的に改正して、地方自治体が自ら権限と財源を持つ制度に変えていく、つまり地域主権改革を実現するしかない。これを実現しない限り、真の「住民自治・地域自治」は実現できない。そのような思いに至りました。
<プロフィール>
寺島 浩幸 (てらしま ひろゆき)
福岡県立修猷館高校、福岡大学法学部法律学科を卒業。1987年に福岡市役所入庁後、総務局法制課、人事委員会任用課、情報公開室係長、市長室経営補佐係長、議会事務局法制係長などを歴任し、2010年8月に退職し、行政書士事務所を開業。市在職中、「日本初の協定方式による第3セクターの情報公開制度の条例化」「日本初のPFI事業(タラソ福岡)の破綻再生」「日本初の『移動権(交通権)』の理念に立脚した議員提案条例の制定支援」に携わる。2011年4月の福岡市議会議員選挙(西区)で、みんなの党公認候補として初当選。市議5名で新たに発足した同党福岡市議団の副代表兼幹事長に就任。12年2月、同党衆議院福岡県第3区支部長に就任。次期衆院選の同党立候補予定者として注目を集めている。
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