<何度も消える大連立構想>
今から4年前、福田康夫首相と民主党・小沢一郎代表との間で、大連立構想が持ち上がったが、民主党内がまとまらず、大連立は成立しなかった。
東日本大震災発生後、菅直人首相が自民党・谷垣禎一総裁に大連立を打診したが、今度は自民党内から反発がおこった。
その後も野田佳彦首相と谷垣総裁の極秘会談に続き、最近は、岡田克也副首相が大連立に動いたが、消費税増税関連法案をめぐり紛糾する民主党の党内事情や、自民党内のパワーバランスを考慮せずに暴走したことにより尻つぼみになった。
そもそも民・自による大連立には無理がある。中選挙区制と違い、現在は小選挙区制が採用されている以上、民主党と自民党はお互い定数1の選挙区で、生きるか死ぬかの戦いを繰り返している。大連立は簡単な話ではないのである。
仮に大連立が成立したとしても、衆議院の任期はあと約1年6カ月足らずしかない。いつまで大連立を続けるのか、選挙区事情によっては、それぞれの議員の死活問題に関わってくる。
ある時点で話合い解散をするのか。任期満了で総選挙をするのか。解散権は首相の専権事項であり、野田首相がすべての衆議院議員の運命を握っているのである。
まさに野田首相の腹積もり次第なのだ。
<解散を恐れる民主党1回生議員>
民主党は当選回数3回以下の議員が7割を占めている。そのため選挙区の基盤が弱く、民主党に風が吹かなければ当選が覚束ない議員が多数いる。
とくに小沢チルドレンを含めた1回生議員は、次の総選挙で生き残るのは2割程度だと言われている。
郵政解散で当選した小泉チルドレンも、現在、生き残っているのは数名しかいない。最悪の場合、民主党1回生議員も小泉チルドレンと同じ運命を辿るかもしれない。
民主党1回生議員にとって、もう1つの心配の種は、橋下徹大阪市長が率いる大阪維新の会の動向である。
維新の会は、次の総選挙に200名前後の候補者を擁立するとしているが、そうなれば一番割りを食うのは、民主党1回生議員であることは誰の目にも明らかである。
<プロフィール>
濱口 和久 (はまぐち かずひさ)
昭和43年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業。陸上自衛隊、舛添政治経済研究所、民主党本部幹事長室副部長、栃木市首席政策監などを経て、現在、テイケイ株式会社常務取締役、国際地政学研究所研究員、日本政策研究センター研究員、日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」キャスター、拓殖大学客員教授を務める。平成16年3月に竹島に本籍を移す。『思城居(おもしろい)』(東京コラボ)、『祖国を誇りに思う心』(ハーベスト出版)などの著書のほかに、安全保障、領土・領海問題、日本の城郭についての論文多数。 公式HPはコチラ。
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