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濱口和久「本気の安保論」

対日関係、露中韓北を動かす「悪の論理」(前)
濱口和久「本気の安保論」
2012年12月11日 12:35
日本政策研究センター研究員 濱口和久

<領土と国民が奪われ続けている日本>
 日本国憲法前文に「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われわれの安全と生存を保持しようと決意した」という文章がある。
 しかし日本と海を挟んで国境を接している国々(ロシア・中国・韓国・北朝鮮)を見る限り、「平和を愛する諸国民」という言葉は、いずれの国にも当てはまらない。

tikyugi.jpg 北方領土はロシアによって不法占拠され続けている。日本政府が沖縄県・尖閣諸島を国有化すると、日本の領海・接続水域に連日、中国の公船が侵入し挑発を繰り返している。
 先月開催された第18回中国共産党大会では、胡錦濤国家主席が海洋権益を守る姿勢を訴え、尖閣諸島をめぐり対立する日本を強く牽制した。韓国はロシアと同様に、日本の領土である島根県・竹島を不法占拠し続けている。北朝鮮は拉致被害者の蓮池薫さんら5人を日本に還したが、すべての拉致被害者を還したわけではない。

 露中韓北が「平和を愛する諸国民」であれば、日本の領土を奪ったり、日本人を拉致したりはしないはずであるが、現実は、領土を奪い、日本人を拉致している。
 日本人には馴染みが薄い言葉かもしれないが、国際関係(社会)は「悪の論理」で動いているとも言われている。とくに地政学的な視点で、ロシアと中国を考察することによって、「平和を愛する諸国民」という価値観ではなく「悪の論理」という価値観で国際関係が動いていることに気づかされる。

 日本で「悪の論理」という言葉が登場したのは、昭和52年(1977)に出版されベストセラーとなった倉前盛通著『悪の論理―ゲオポリティク(地政学)とは何か』(日本工業新聞社)からである。とくに国家指導者(首相クラス)は、国際関係は過去・現在・未来を通じて、「悪の論理」で動いているという認識を持たなければならない。

 日本人は人を疑うことや、人を騙すことに後ろめたさを感じる民族であるが、国際関係では、人を疑う、人を騙すことが常識なのである。日本は戦後、米国の庇護のもと、安全保障問題を軽視してきた。そして露中韓北に対して配慮外交を続けてきた結果、いまだに領土と国民が奪われ続け、「歴史カード」でも揺さぶりをかけられている。日本に対する露中韓北の動きこそが「悪の論理」そのものなのである。

<ロシアは力こそがすべて>
 日本が近代国家としての歩みを始めた頃から、日本とロシアは地政学的に対立関係にあった。ロシアの不凍港を求めた南下政策と、飽くなき領土膨張主義は、日本の安全保障上の脅威となり続けた。結果、日本は日露戦争を戦い、辛うじてロシアの南下を防いだ。そして日本は朝鮮半島と中国における権益を獲得し、ロシアから南樺太の割譲を受ける。

 戦争で失ったものは、戦争で取り返すしかない。このことは、必ずしもすべての領土問題にあてはまる訳ではないが、ロシアを相手にした場合には、話は違ってくる。
 日本が米戦艦ミズーリー号艦上で降伏文書に署名した昭和20年(1945)9月2日、スターリン首相はソ連国民に対して「40年間の怨念(日露戦争での敗北)を晴らすときをじっと待っていた」という戦勝演説を行ない、南樺太、千島列島の軍事占領(不法占拠)を正当化した。あわよくば北海道まで軍事占領しようと目論んでいたことを示す証拠「北海道・北方領土占領計画書」も、山形県酒田市のシベリア資料館から発見されている。

 駐ルーマニア大使館初代防衛駐在官を務められた乾一宇氏が、著書『力の信奉者ロシア  その思想と戦略』(JCA出版)で、ソ連の領土膨張主義およびロシア人の本質を次のように説明している。
 ロシア語には「安全」という言葉はない。「危険のないこと」の言葉を持って代用している。「危険のないこと」は相手との関係において生じるもので、相対的なものである。その感じ方が、ロシア人は特別である。
 これくらいでいいだろうとは思わない。力の均衡ということを考えない。均衡に達したとすると、それを少しでも凌駕しようとする。その少しが、どんどん拡大していく。相手より倍になっても安心することなく、止めどもなく「危険のない」状態を求めていく。
ロシア人にとって安全という心安らかな状態は存在せず、唯一の安全は、領土を膨張させる以外にはないのである。

 ロシアは広大な草原の国であり、身を守る障害物が少なく、外国から幾度となく侵略されてきた。そのため危険のない状態を求めて、ロシアは領土を拡大し、大陸軍国家として膨張してきたのである。 
 国境線を接した国に隙があれば版図に入れ、未開拓地と見れば、勢力圏に入れる。シベリアの人跡未踏の地を突き進み、海を渡りアラスカまで手に入れた。「攻撃は最大の防御なり」という言葉は、ロシア人が身を持って会得したものである。これこそが、ロシアが「力の信奉者」と言われる由縁なのである。
 安全保障に対するロシア人の論理の根源は力である。そのことの理解なくして、ロシアの言うがままに経済協力をするだけでは、絶対に北方領土は還ってこない。力には力で対抗するという外交的価値観を持たなければ、北方領土交渉は絶対に前進しないのである。

(つづく)

| (後) ≫

<プロフィール>
hamaguti_p.jpg濱口 和久 (はまぐち かずひさ)
昭和43年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業。陸上自衛隊、舛添政治経済研究所、民主党本部幹事長室副部長、栃木市首席政策監などを経て、テイケイ株式会社常務取締役、国際地政学研究所研究員、日本政策研究センター研究員、日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」キャスター、拓殖大学客員教授を務める。平成16年3月に竹島に本籍を移す。今年3月31日付でテイケイ株式会社を退職し、日本防災士機構認証研修機関の株式会社防災士研修センター常務取締役に就任した。『思城居(おもしろい)』(東京コラボ)、『祖国を誇りに思う心』(ハーベスト出版)などの著書のほかに、安全保障、領土・領海問題、日本の城郭についての論文多数。5月31日に新刊「だれが日本の領土を守るのか?」(たちばな出版、現在第3版)が発売された。 公式HPはコチラ


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