<防衛費は10年連続のマイナス>
通常国会は会期延長がなければ、6月21日に閉会する。今国会で成立した2012(平成24)年度の日本の国家予算は、一般会計総額が90兆3,339億円。前年度比2・2%減だが、特別会計に計上した東日本大震災の復興費と基礎年金の国の負担を加えると96兆6,975億円となる。事実上、過去最大の予算規模となった。
それに対して防衛費は、前年度予算比で0.4%減の4兆6,453億円。10年連続で減少し、1993(平成5)年度の予算規模と並んだ(SACO関係費を除く)。
自衛隊は創設当初から、税金泥棒として批判された時代が長く続いた。しかし雲仙普賢岳噴火、阪神・淡路大震災、東日本大震災をはじめとする数多くの日本国内の災害に派遣され、国民から頼もしい存在して期待されている。
とくに東日本大震災では、全国の陸海空部隊・機関から延べ1,066万人が派遣され、自衛隊にとっても、史上最大の災害派遣(作戦)となった。
一方、自衛隊は1992(平成4)年9月に国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)への派遣を皮切りに、13件の国際平和協力業務に部隊又は個人派遣の形で、延べ約7,000人を派遣してきた。ちなみに1人の犠牲者も出ていないことは奇跡に近い。今年1月から南スーダンにも陸上自衛隊を中心とした部隊を派遣している。
諸外国では国防(防衛)予算や人員は戦略に基づいて決められる。日本では過去10年間、まず防衛費の大枠が決まり、そのなかで装備品の調達や人員が決められてきた。
<財務省VS防衛省>
防衛省は2012(平成24)年度予算案の概算要求で、陸上自衛隊実員109人の増員を求めた。東日本大震災ではじめて派遣された原子力災害などに対処する化学科部隊の増員であったが、財務省は認めなかった。
これでは自衛隊は新たな脅威や任務に対応できなくなる。部隊運用に支障をきたすことにもなり兼ねない。一番困るのは現場の自衛官たちなのである。
<プロフィール>
濱口 和久 (はまぐち かずひさ)
昭和43年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業。陸上自衛隊、舛添政治経済研究所、民主党本部幹事長室副部長、栃木市首席政策監などを経て、テイケイ株式会社常務取締役、国際地政学研究所研究員、日本政策研究センター研究員、日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」キャスター、拓殖大学客員教授を務める。平成16年3月に竹島に本籍を移す。今年3月31日付でテイケイ株式会社を退職し、日本防災士機構認証研修機関の株式会社防災士研修センター常務取締役に就任した。『思城居(おもしろい)』(東京コラボ)、『祖国を誇りに思う心』(ハーベスト出版)などの著書のほかに、安全保障、領土・領海問題、日本の城郭についての論文多数。5月31日に新刊「だれが日本の領土を守るのか?」(たちばな出版)が発売された。 公式HPはコチラ。
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