<理想は「穏健な多党制」>
国民の意思を、常に正しく反映することができる選挙制度は存在しない。どういう政治を目指すかによって、それに適した選挙制度を選択すると考えるべきだ。選挙制度を変えることによって、政治を変えることができる。政治学者のジョバンニ・サルトーリは、「選挙制度は、政治のもっとも操作可能な部分」と言っている。
国会議員たちが次の選挙に当選するための選挙ではなく、国内外に抱える問題をよりよく解決する政治を実現するための選挙であり、政治をよくするための選挙制度改革である。
現在の政治の問題点である衆参のねじれ国会、「決められない政治」を打開するには、どのような形が理想なのか。足の引っ張り合いにならないような形を作り、政党の利益よりも国益や国民の生活をよくする政策を推進することに重きを置くことのできる政治システム、政治の流れを作っていくことが必要だ。
成田教授は「参議院はもう少し多党化させた方がいい。政策ごとに近い多党派を形成して、政策中心の政治をやりやすくする。現在より比例を重視して、多党化した状況になるのが理想。政権としては連立を組むことになる」と、政治学者サルトーリの政党分類論による「穏健な多党制」が理想的な形だと語る。
<政策テーマで結束>
サルトーリの定義によると、「穏健な多党制」は、政権に関わる政党が3~5政党程度の状態だが、成田教授は、「日本の場合は、もう少し多くなってもいいと考えている」としている。
2大政党だと政権争いのための足の引っ張り合いが中心になるが、多党化の状況では、直接的な政権争いの要素は後退し、政党は、国民や支持基盤の利益を考え、政策を中心にまとまり、政治を推し進める。そのため、政策ごとの多数派の形成がやりやすくなる。衆議院は、2大政党を軸に穏健な多党制として政権の基盤とし、参議院は、もっと多党化させてもいい。全体として、現在よりも多党化させて、動かない政治を解消する。
ただ、穏健な多党制が理想的に機能するためには、政治家が党利や党の思惑よりも政策、国民の声を優先することが不可欠だろう。政治家の意識改革が必要だ。
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