会社に社風があるように業界にも特徴・傾向が現れる。美容業界について「真面目で研究熱心」と心酔するのは原口智架誌氏。新たに発足した会計事務所・keikai（株）（福岡市中央区）で取締役として実務を取り仕切る。「経営者・スタイリストとも夜遅くまで懸命に働き、休日にも積極的に勉強会・講習会に参加する」と向上心に舌を巻く。ただし、競争は熾烈だ。福岡県の美容室数は8,561（11年３月末）。理容室の２倍近くの店舗がひしめいている。また「業界には技術向上に熱心な一方で、経理に淡泊な経営者が少なくない」と懸念する。

　「どんぶり勘定になってしまい。せっかくの技術が無駄になりかねない」。原口氏は、敬愛する美容業界従事者の役に立ちたい一心で美容室専門の会計に取り組むことにした。原口氏はもともと思いやり経営で知られる「緒方会計グループ」の一員として辣腕をふるう。業界への思いを緒方代表ら仲間に打ち明けkeikai（株）の発足につなげた。実は関心のある業界はほかにも２つほどあったが、とくに美容業界の役に立ちたいと特化することにしたのだ。構想から立ち上げまで短期間で実現したが、スタッフ・パートナーなど準備は周到に行なった。それは、原口氏の経営者としての経験が活かされている。

　09年10月、会計業務を行なう一方で中央区大名に「猫カフェ　Classic」をオープンした。「経験しなければオーナーの気持ちはわからない」との思いで大好きな猫が戯れる喫茶店をオープン。文字通り経営を行なった。そこで「会計事務所としては利益獲得に力を注いで欲しいが、経営者は日々の資金繰りが何より大事」ということに気がついた。貴重な経験だったがもともと利潤追求を目的としていない店舗。繰りまわしは順調だったが、成果を確認し昨年10月の賃貸契約終了をもって営業を終了。会計業務に専念した。

　こうした経営者としての経験も注ぎ込まれたkeikai（株）の業務は従前の会計事務所とは一線を画す。会計に関する業務全般をサポートするのは当然ながら、ビジョンに基づいた経営計画書の策定や業務のフロー化。覆面調査員によるモニタリングによる改善提案まで取り組む。加えて、美容室経営者との提携により技術や経営、教育などのサポートまで行なう充実ぶりだ。さらにブランディングを含めた広告展開まで踏み込む。関わった店舗をとことん支援しようという意気込みが伝わって来る。

　「とにかく業界の発展に力を尽くしたい」と数値的な目標は設定しないが、「３年間で100店舗ほどのサポートができるようにはなりたい」と夢が膨らむ。熱心な店舗が繁栄していく土壌を創るために原口氏の挑戦は続く。

＜COMPANY　INFORMATION＞
■keikai（株）
取締役サロンコーディネーター：原口智架誌
所在地：福岡市中央区赤坂1‐10‐23グレース赤坂６Ｆ
ＴＥＬ：092-731-5757
ＦＡＸ：092-731-8488

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