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未来トレンド分析シリーズ

中国から飛来するPM2.5による環境汚染問題(3)
未来トレンド分析シリーズ
2014年1月28日 07:00
国際政治経済学者/参議院議員 浜田 和幸 氏

img3.jpg PM2.5にはディーゼル自動車から直接排出される一次粒子と、ガス状の物質が大気中で化学反応を起こし生成される二次粒子が存在する。その成分も硫酸塩、硝酸塩、有機炭素、重金属など多様である。
 こうした有害物質の拡散を抑えるためには、発生源別の排出量の把握が重要となる。現時点でも、複数の機関が北京市のPM2.5の排出源の特定に向けて調査を行なっている。そうした調査によれば、北京市のPM2.5の25%程度は自動車の排ガスが原因という。また、25%は隣接する天津市や河北省からの越境汚染である。そして、32%は暖房や調理による石炭などの燃焼。残りが工場からの煤煙や工事現場からの砂塵などと目されている。
 いずれも急激な経済産業成長政策の負の遺産である。

 環境保護局は二酸化硫黄の排出抑制に向け、第10次5カ年計画(2001-2005)の期間において、「2005年には2000年と比較し、排出量を10%削減する」との目標を掲げていたが、実際には30%近い増加という惨憺たる結果に終わった。その原因は、(1)エネルギー消費に占める石炭の比率の高まり、(2)経済成長による火力発電や鉄鋼などの需要の急速な増加、(3)多額の初期投資と運用費用がかかる脱硫酸装置に対し、政府の補助策が不十分であったため、企業の導入が進まなかったこと、(4)総量規制を各地域に割り当てる際、地域や企業の特性や能力を考慮しなかったこと、(5)オンラインでの自動モニタリングが整備されていないため、検証が困難であったこと、が指摘されている。

 こうした状況を受け、中国では脱石炭化に向けてさまざまな試みが始まった。その結果、石油の割合が5%上昇したのである。しかし、原油価格の上昇という状況に直面したため、現在は非化石エネルギー(水力、風力、原子力)の開発が進んでいる。とはいえ、いずれも全エネルギー需要の数%をまかなうレベルにとどまったままだ。

 2012年、中国の自動車保有台数は1億台を突破した。自動車による排気ガスは増大する一方である。というのは、中国では新車の場合でも、排ガス規制が欧米や日本と比べ、基準が緩くなっているためである。しかも、それ以上に規制の緩い中古の自動車も多く使用されている。急速なモータリゼーションは中国の環境悪化に拍車をかけている側面は否定できない。

 道路の総延長については、ヨーロッパと中国の自動車道路の距離は、ほぼ同じになっている。しかし、鉄道に関しては、中国はヨーロッパの4分の1以下。また、都市部における公共交通手段についていえば、東京都内では、2,364キロメートルの鉄道が交通量90%以上を分担しているのに対し、北京では、公共交通手段に自転車の利用率を含めても、交通量全体の50%に達していない。こうした公共交通手段の遅れも、公害問題の解決に障害となっていると言えるだろう。しかも北京においては、人口の76%が主要幹線道路の50メートル以内、あるいは高速道路の500メートル以内に居住しているとのデータもあり、健康への悪影響が懸念されている。

(つづく)

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<プロフィール>
浜田和幸氏浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。


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