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「情報公開」と「知る権利」・「説明責任」~福岡市・行政改革の実態(18)
行政
2011年2月 3日 07:00

 これまで、「情報公開」の必要性・重要性について、機能的な側面から書かせていただきましたが、今回は、法的な側面について「情報公開制度(以下、公文書公開制度を指します)と「行政の説明責任(アカウンタビリティ)」との関係なども、少し整理して書かせていただきます。少々、かたい内容でたいくつされるかも知れませんがご容赦ください。

 さて、情報公開制度にはふたつの大きな特徴があります。(1)ひとつは、市民から情報公開請求がなされた場合は、個人のプライバシーや法人の企業秘密など条例で規定されている非公開情報に該当しなければ、行政機関には原則として公開しなければならない義務があるということ、(2)ふたつ目は、情報公開制度を利用する際には、市民はその「利用目的は問われない」ということです。
福岡市役所 市民は、市政に参加するという目的以外でも、たとえば商売上・営業上の営利目的や行政機関に対する不信感、個人的な興味などの様々な理由によって、情報公開制度を利用することができます。もちろん犯罪目的や嫌がらせ目的が明らかな場合などは例外です。
 このことから、「市民の情報公開請求権は、かなり強力な権利である」といえますが、なぜ、ここまで強力な権利として保障されているのでしょうか。また、それを根拠付ける考え方はどのようなものなのでしょうか?
 まず、情報公開請求権の重要性を裏付ける法的根拠としては、「知る権利」が挙げられます。「知る権利」は、憲法の通説的な考え方では、議会制民主主義(代表民主制)において不可欠な基本的人権である「表現の自由」の現代的なバージョンであると考えられています。

 この「知る権利」について、概略を説明いたします。
 「かつての19世紀の近代社会においては、国家はできるかぎり個人の私生活には介入せず、最小限度の秩序の維持と治安の確保という警察的任務のみを負うべきものとされており(自由国家・消極国家・夜警国家などと呼ばれます)、アダム・スミスの「見えざる手」に代表されるように、完全なる自由競争を通じて社会・経済の調和がもたらされるものと信じられていました。
ところが、20世紀の現代社会では、資本主義の発達にともなって、富の偏在が起こり、経済的・社会的に弱い立場に立つ人々の自由と生存を確保するためには、国家が個人の私生活に積極的に介入し、完全な自由競争を許さず、国家的な干渉と計画を必要とするようになりました(社会国家・積極国家・福祉国家などと呼ばれる)。

 この福祉国家現象は、行政の役割を飛躍的に増大させ、その内容を多様化・専門化させることになり、その結果、様々な行政活動を通じて、様々な情報が行政機関に集中するという「行政への情報集中」がもたらされることとなりました。
 さらに、20世紀の現代社会では、社会的に大きな影響力を持つマス・メディアが発達し、それらのメディアから大量の情報が一方的に流され、情報の「送り手」であるマス・メディアと情報の「受け手」である国民との分離が顕著になってきました。
 このような「行政への情報集中」と「情報の送り手と受け手の分離」が進んでしまった現代において、「国民の民主政治への参加」を保障するためには、国民が自己の政治的意思を決定し、それを表明する自由、つまり従来の表現の自由を保障するだけでなく、国民が意思を決定するために、その前提として必要となる情報を収集する権利と自由、つまり「知る権利」をも保障することが必要になってきます。
 情報公開制度は、この「知る権利」に支えられた制度であるといえるのですが、実は私は、この「知る権利」からストレートに、「市民の情報公開請求には目的を問わない」という考え方は出てこないのではないかと思っています。

(つづく)
【寺島 浩幸】

≪ 第17回「情報公開の成功事例」 | 

<プロフィール>
寺島浩幸氏寺島 浩幸 (てらしま ひろゆき)
福岡県立修猷館高校、福岡大学法学部法律学科を卒業。1987年に福岡市役所入庁後、総務局法制課、人事委員会任用課、情報公開室係長、市長室経営補佐係長、議会事務局法制係長などを歴任し、2010年8月退職。在職中、主に法律関係の職務に従事するとともに、市長直属の特命業務や議員提案条例の支援を担当するなど、市長部局と議会事務局の双方の中枢業務を経験。
 現在は、行政書士事務所を開業して市民の身近な問題の解決をサポートするとともに、地域主権の要となる地方議会の機能強化を目指し、議員提案条例アドバイザーとしても活動中。

<主な実績>
・日本初の協定方式による第3セクターの情報公開制度の条例化
・日本初のPFI事業(タラソ福岡)の破綻再生
・日本初の「移動権(交通権)」の理念に立脚した議員提案条例の制定支援

▼関連リンク
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・ツイッターは、コチラ


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