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タラソ福岡=PFIの失敗(後)~福岡市・行政改革の実態(29)
行政
2011年2月18日 08:00

タラソ福岡事業 福岡市で初めてのPFI事業である臨海工場余熱利用施設整備事業(タラソ福岡事業)は、残念なことに平成16年11月、平成14年4月の事業開始以来、わずか約2年8カ月で破たんしてしまいました。これは、全国で初めてのPFI事業の破たん事例となり、マスコミで大きく報道されました。
 破たんの原因は、いろいろと分析されて公表されていますが、当時、私は市長室で市長の特命として、タラソ福岡事業の再生を担当していたので、私なりに感じていることをお話しします。

 まず、PFI事業者の選定過程に問題がありました。タラソ福岡事業の事業者には2つのグループが応募しました。ひとつは、この事業の事業者となったA社グループで、もうひとつはB社グループです。市の上限契約価格は約17億円だったところ、A社グループが提示した契約額は約11億9,000万円で、B社グループは約16億9,000万円でした。2段階の選考を経ましたが、両社の5億円の価格差は大きく、結局A社グループが事業者に決定しました。
 あとになって考えると、A社グループが提示した約11億9,000万円が本当に妥当な金額であったのか否か疑問が残ります。なぜなら、タラソ福岡の事業期間は15年間であり、契約金額には当然、施設建設のイニシャルコストと15 年間のランニングコストの両方を含むはずですが、A社グループと親会社のA建設は、契約金額よりも1億円も高い約12億9,000万円でタラソ福岡の施設を建設するという不可解な契約を締結していたからです。
 つまり、スタート時点ですでに、タラソ福岡事業の持続可能性はかなり厳しい状況になっていたといえます。(A建設はその後、民事再生手続が開始されることになります。)

 このPFI事業の契約に関して、福岡市は民間のコンサルタント会社に2,000万円近いアドバイザー報酬を支払ったにもかかわらず、タラソ福岡は最初から問題を抱えていたと言っても過言ではありません。
 タラソ福岡事業の実施方針を公表したのは平成12年3月で、民間資金などの活用による公共施設などの整備などの促進に関する法律(PFI法)が施行してまだ間もない頃でした。そして、事業者の決定は平成13年2月でした。当時は全国的にもPFIの前例も少なく、市の担当者はかなり苦労したと思います。

 次に、問題があったのは、市の調査・モニタリング機能の不十分さです。PFI事業者の経営状況や財務状況など、契約当事者である市は、しっかりとチェックしなければなりません。しかし、もともと市に民間企業の財務状況やタラソテラピー事業の運営状況をチェックできるスキルはありませんので、実際はPFI事業者からの報告を受け取っていたに過ぎない結果となってしまっていました。学校や道路、病院であれば、まだ多少なりとも市においてもチェックするノウハウがあったと思いますが、私は、タラソ福岡の事業内容は、その性質上、通常の行政活動から遠いものであり、換言すればPFI事業として相応しかったのかどうか疑問が残るものと考えています。

(つづく)
【寺島 浩幸】

≪ 第28回「タラソ福岡=PFIの失敗(前))」 | 

<プロフィール>
寺島浩幸氏寺島 浩幸 (てらしま ひろゆき)
福岡県立修猷館高校、福岡大学法学部法律学科を卒業。1987年に福岡市役所入庁後、総務局法制課、人事委員会任用課、情報公開室係長、市長室経営補佐係長、議会事務局法制係長などを歴任し、2010年8月退職。在職中、主に法律関係の職務に従事するとともに、市長直属の特命業務や議員提案条例の支援を担当するなど、市長部局と議会事務局の双方の中枢業務を経験。
 現在は、行政書士事務所を開業して市民の身近な問題の解決をサポートするとともに、地域主権の要となる地方議会の機能強化を目指し、議員提案条例アドバイザーとしても活動中。

<主な実績>
・日本初の協定方式による第3セクターの情報公開制度の条例化
・日本初のPFI事業(タラソ福岡)の破綻再生
・日本初の「移動権(交通権)」の理念に立脚した議員提案条例の制定支援

▼関連リンク
寺島氏ブログ
・ツイッターは、コチラ


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