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未来トレンド分析シリーズ

増え続ける原発ビジネスのリスクと日本の対応(4)
未来トレンド分析シリーズ
2011年9月 1日 07:00
総務政務官 浜田 和幸

韓国 とはいえ韓国の場合は、日本の原発事故を自国の海外展開のきっかけにしようとの強かな動きを強めているから、驚かされる。具体的には、ごく最近、インドとの間で原子力協力協定を調印した。こうした協定は、原発に関する取引を行なう際には必ず結ぶことが義務付けられているもの。インドにとって、韓国は9番目の締結国となったわけだ。日本はインドとの間で交渉を始めたものの、いまだ締結には至っていない。

 人口で中国を間もなく抜くのが確実視されているインド。電力需要も増える一方である。現在、インドでは20基の原発が稼働中で、新たに6基の建設が進んでいる。2032年を目標に約40基の原発を完成させ、原発の発電能力を6,300万kWに高めるという。インドの原発市場の規模は、日本円にして約12兆円。韓国は虎視眈々と日本の抜けた後を狙っているようだ。

 というのも、韓国は09年、アメリカ、フランス、日本といった原子力大国を抑え込み、アラブ首長国連邦にて原発の新規受注に成功しているのである。今や韓国のお家芸ともいわれる官民一体化戦略。原発の輸出にも、この国家戦略が活かされている。イ・ミョンバク大統領自らが、トップセールスを積極的に推し進めているではないか。

 イ大統領曰く、「事故が起きたからと言って原発を否定したら、人類が技術面で後退する。安全管理を徹底した上で原発を推進すべきだ。国内でも原発建設を続けるし、国外への輸出攻勢を見直す考えはない」。実に首尾一貫した姿勢といえよう。日本との違いは歴然としている。
 事故の結果であるが、日本の場合は「脱原発」を打ち出し、原発輸出の見直しを示唆する政府要人の発言が相次いだ。日本企業が新たな売り込み先として検討しているインド、トルコ、ブラジルなどでも、我が国政府は原子力協力協定が結べない状態が続いている。 その間隙を縫うようにして、韓国は日本が先行して原発2基の受注を得ているベトナムに対しても、原発に関する技術協力を申し出ているほど。

 このままでは、日本が先鞭をつけた市場であろうと、韓国は持ち前の積極的な売り込み戦術を駆使し、次々とオセロの目を変えるように自らの市場に塗りかえてしまうだろう。我が国の取るべき戦略は、安全面を前面に打ち出すこと。その意味でも、今回の福島原発の事故から得られた教訓を最大限に活かした新たなビジネスモデルの構築が、欠かせない。

 先に東京で開催された日韓・韓日協力委員会でも合意が得られたように、日中韓3カ国による「原子力危機対応共通行動計画」を作成し、実際の危機管理訓練に着手すべきであろう。朝鮮半島や中国でも大災害は頻発している。第2の福島がいつ起こっても不思議ではない。目の前にあるリスクを過小評価するわけにはいかない。日本の対外的評判が低下しているなか、国際社会に対する責任を果たす姿勢を明確に打ち出すときである。間もなく誕生する新たな首相にも、そうした覚悟と使命感に基づき、素早い行動を期待したい。

(了)

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<プロフィール>
浜田和幸氏浜田 和幸(はまだ かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務政務官に就任。震災復興に尽力している。

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