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開幕間近のロシア政治劇「プーチン・パート2」(後)
未来トレンド分析シリーズ
2012年3月21日 07:00
国際政治経済学者 浜田和幸

 我が国としても、強かなプーチン体制下のロシアの強みと弱みを冷徹に判断し、どう向き合うべきか、改めて戦略を練り上げておかねばならない。その意味で、プーチン首相の発言は注意深く検証しておく必要がある。

2011_ch.jpg たとえば、同首相は選挙直前の2月27日、外交政策に関する論文「ロシアと変貌する世界」を発表した。この論文のなかでプーチン首相は、中国との連携を軸にシリア情勢、イランや北朝鮮の核問題など欧米とは一線を画す姿勢を鮮明に打ち出している。
 最大の特徴は、アジア太平洋地域を重視する立場をはっきりと打ち出したうえで、「国境を接する中国の経済成長はロシアにとって決して脅威ではなく、ロシア経済が成長を遂げるうえに欠かせない追い風となる」と、親中国路線を強調していることである。
 曰く「中国の声は世界に響き渡っており、我々はそれを歓迎する。なぜなら、平等な国際社会を作るという視点を共有しているからだ」。ともに軍事力の強化に余念のないロシアと中国。
 こうした発言は先に国連安全保障理事会での対シリア決議案採決に際し、拒否権の行使で中ロが歩調を合わせたことと相通じるものがある。ほかにも、南アフリカを加えたBRICs5カ国や上海協力機構などの舞台を通じて、ロシアは中国との関係強化を全面的に打ち出している。

 実は、昨年の下院選挙で不正が行なわれたとの厳しい批判を内外から受け、今回の大統領選挙の実施にあたっては、公正さと透明性を確保するため、すべての投票所に50万台の監視カメラと30万台の通信用パソコンを設置することが決められていた。
 当初、この入札に日本企業にも参加を求めていたが、最終的には中国と台湾の企業が大半を落札した。日本企業にとっては、入札条件の提示が締め切り間際であった点が響いた。
 かろうじて契約が成立した日本企業は、中国企業と連携した場合に限られていたという。ある意味で、当て馬にされたようなもので、残念な結果であった。
 この背景にはロシアにとって中国は年間835億ドルの貿易相手国であるが、日本との貿易額は400億ドルと中国の半分しかないという現実が横たわっていることは否めないだろう。

 今回のプーチン首相の外交政策に関する論文でも、アジア太平洋地域を重視していると言いながら、日本に関しては一言も言及がなかった。
 本年九月にはウラジオストックでアジア太平洋経済協力会議(APEC)の総会が開催される予定である。「アジアとの統合を目指す」というロシアにとっては、東シベリアや極東地域の開発に、日本の技術や資金の提供が欠かせないはずである。
 実際、APEC会場となるウラジオストック・ルースキー島への橋梁建設や大型発電施設、海底送電線の敷設などはすべて日本企業が請け負って準備が進められている。
 にもかかわらず、大統領選直前の重要な外交政策論文において、中国やインドには積極的な関係強化を謳いながら、我が国に関する言及がまったくないのはどういうことであろうか。

 プーチン首相は大統領であった2006年9月のロシア主導によるバルダイ会議の席上、「自らの大統領任期中にロ日間の領土問題を解決したい」と意気込みを見せていた。翌年にも自らの本気度を繰り返し主張しており、2人の娘たちにも日本語を学ばせていることを明らかにしたものである。
 しかし、日本のメディアも政府も、こうしたプーチン氏の日本に対する呼びかけに対し、正面切って反応することはほとんどなかった。それどころか、愛娘は中国に取られてしまっている。このことがプーチン氏の言動に影響しているのかもしれない。

 もちろん領土問題は2国間に刺さった棘のようなものであり、我が国の立場からすれば、まず折れるべきはロシア側であり、この"未解決の諸問題"を解決するには、ロシア側がこれまでの国際法を無視した対応を改めることが前提となることは言うまでもない。
 歴史的事実関係から見ても、日本がポツダム宣言を受諾し、終戦を迎えた直後の8月18日から9月9日にかけて、ソ連軍が当時日本の領土であった千島列島に武力侵攻を開始した。
 そして、アメリカ軍が上陸していないことを確認したうえで、日本軍と約1万7,000人の日本人住民全員を追い出し、今日まで続く占拠を行なっている。
 しかし、問題は多くのロシア人が、日本人のシベリア抑留問題や北方領土を巡る歴史的背景を知らされていないことである。

 プーチン氏が大統領に返り咲いた機会をとらえ、我が国とすればロシアに対する広報活動に知恵を絞り、従来の枠を超えて強化する必要がある。
 ロシアでは「新たな市民」と呼ばれる中間層が生まれ、経済的な豊かさが、これまで以上に追求される時代になっている。日本の商品やサービスに対する評価や期待も大きい。
 幸い、我が国の地方自治体のなかには、ウラジオストックに経済、文化交流の拠点を設けているところもあり、「還日本海大交流時代」に相応しい独自の役割を果たせる可能性を秘めている。
 これまで絶対的指導者であったプーチン氏にとっても、「不確実と不安定性の時代」への突入を余儀なくされているわけで、日本との関係においても新たな可能性を求めてくるだろう。
 というのも、中国やインドにはない、日本の誇る環境・エネルギーや医療関連の技術が期待されているからだ。領土問題の解決と経済関係の強化を図るうえでの、新機軸となるのか。

 3月1日のプーチン氏による外国メディア編集長との懇談では、そうした変化の兆候が見て取れた。
 プーチン氏曰く「日本との貿易経済関係が本格的に拡大することを非常に欲している。現状は取るに足らないもので、両国の経済の潜在性に合致していない」。
 脱エネルギー依存を標榜し、製造業重視を打ち出す新生プーチンは「極東開発会社」の設立にも熱心な姿勢を見せている。このような好機到来を活かさない手はないだろう。とはいえ、ソ連時代を含め、ロシア史上最長、最強の最高指導者の地位を手に入れたプーチン氏の今後は想定外の連続となりかねない。エネルギー政策ひとつをとっても、中国と日本を競わせ、有利な条件での取引を画策するのがプーチン流である。

 プーチン新政権の顔ぶれも大幅な若返りとなりそうだ。事前のシナリオが意味をなさない事態も起こり得る。想像力をたくましくし、かつてないチャンスを最大限に活かす準備を進める時であろう。

(了)

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<プロフィール>
浜田和幸氏浜田 和幸(はまだ かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。現在、外務大臣政務官と東日本大震災復興対策本部員を兼任する。


 
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