「次世代自動車」といえば、HV(ハイブリッド)、PHV(プラグイン・ハイブリッド)、EV(電気自動車)を筆頭に、水素を用いたFC(燃料電池自動車)など"エコカー"の開発が進んでいる。しかし、従来の"ガソリン・ディーゼルエンジン"の究極の省エネ化を重視する研究もある。
<発電が前提となるEV車の問題点とは>
9月26日、トヨタが同社としては初の軽自動車「ピクシス スペース」を発売すると発表し、大きな話題となった。ダイハツからのOEM供給で価格は112万円から。ほかに軽トラックなど2車種をOEM生産に加えるが、2012年以降の3車種合計の販売台数を年間6万台にする方針という。この背景には、軽以外の新車販売台数がピークとなる1990年の598万台から2010年には323万台年まで減少する一方で、軽は170万~180万台前後を維持しており、新車市場における占有率は23%から35%まで拡大した(日本自動車販売協会連合会などのまとめ)。乗用車に比べ税金が安く燃費効率の良さや低価格もあり、とくに地方のセカンドカーとして支持されているようだ。
こうしたなか、エコカー代表選手の1つであるEVは今後どうなるのか。「EVはエコロジーをキーワードとしているわけですが、その中身は大きく2つあると思います。1つは一酸化炭素や窒素酸化物などの人体に有害なガスを出さない、もう1つは温暖化ガスであるCO2を出さない、ということです。EVが注目を浴びたのは、今回で3度目と言われています。まず1970年代のオイルショックのとき、次に1980年半ばの米国カリフォルニアにおけるゼロエミッション規制のとき、3度目が今回ですが、CO2問題が大きな理由だと考えられます。その間、電池も『鉛蓄電池』『ニッケル水素』『リチウムイオン』と大きく進化してきています。しかし、燃料のエネルギー密度を考えると、液体燃料であるガソリンや軽油には遠くおよばないものです。すなわち、走行距離が短いというのがEVの最大の問題と考えられます」と、村瀬教授はEV車の問題点を指摘する。
東日本大震災以降、日本の世論は再生可能エネルギーとそれに関わる新技術の開発へと傾いていった。一方で、「脱原発」による電力不足が懸念され、当面はこれまで同様に火力発電を中心とした発電が行なわれていくだろう。
現在は発電の約7割が火力で、燃料は石炭と天然ガスがそれぞれ40%、石油が15%使用されていると言われている。これらの燃料を燃やして発電するとき、また燃料を産出国から船で運んでくるときもCO2を排出している。「エコロジーという観点で一番申し上げたいのは、『タンクtoホイール』で見るのではなく『ウェル(井戸)toホイール』で見て議論しましょう、ということです」と村瀬教授は訴える。
「タンクtoホイール」とは、通常の車なら燃料タンクにある燃料がエンジンで燃焼してタイヤを回すまでに排出するCO2についてを考えるという意味。EVの場合、タンクは電池になるが、「その電気がどうやって作られるのかを考えなければいけない」(村瀬教授)と根源的な問いを投げかける。
CO2排出が一番少ないとされていた原子力発電の欠陥も露見し、将来性がガラリと変わった。「同じことは、水素を燃料とする燃料電池車にも言えます。水素の製造工程で、やはりCO2が発生します。なお、水素は石油などのような一次エネルギーではなく、製造が必要であるので、エネルギー媒体ととらえるべきです」(村瀬教授)。こうした一次燃料の採掘から最終的な消費までを考えるのが、「ウェル(井戸)toホイール」の意味である。
<プロフィール>
村瀬 英一(むらせ えいいち)
九州大学工学研究院 機械工学部門 教授
自動車技術会理事、日本燃焼学会理事、日本機械学会フェロー
1981年、九州大学大学院工学研究科動力機械工学専攻博士課程修了(工学博士)。専門は内燃機関の燃焼で、エンジンシリンダ内のガス流動、点火・燃焼を主として研究。日本燃焼学会にて理事、自動車技術会ガソリン機関部門委員会にて前委員長、日本機械学会エンジンシステム部門で部門長を務め、内燃機関研究の代表として指揮を執る。
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