<中国海軍の伸張>
防衛庁(現・防衛省)は、平成16(2004)年7月6日、「沖ノ鳥島西方約200キロメートル、つまり日本の排他的経済水域内で、中国海軍測量船「南調411号」がワイヤーを垂らして、音波を発信しながら海洋調査を実施しているところを海上自衛隊P―3C対潜哨戒機が発見した」と発表した。
中国海軍の海洋調査の目的は、潜水艦の航行に必要な「水温分布」のデータ収集であったと思われる。水温の高低によって、潜水艦のスクリュー音の伝わり方は違ってくる。つまり、潜水艦がどれほどの深さに潜ったら、相手のソナーにキャッチされにくいかなどのデータを集めていたのである。
中国の海洋調査が着実に進んでいる証拠を示すものとして、平成22(2010)年12月31日付の産経新聞が「複数の政府関係者が明らかにした」として、「中国海軍の原子力潜水艦(漢級)が平成21(2009)年2月頃、沖縄県の宮古島と与那国島の間を通過して、九州~沖縄~台湾~フィリピン~ボルネオ島を結ぶ第1列島線を突破した」と伝えている。本来、宮古島と与那国島の間の海域は遠浅で、漢級クラスの大型原潜の潜航には適さないことから、沖ノ鳥島海域だけでなく、中国海軍は宮古島と与那国島の間の海底地形も熟知していることが証明されたことになる。
<沖ノ鳥島を第2のミスチーフ礁にするな>
中国海軍はここ数年、沖ノ鳥島海域で軍事演習を頻繁に行なっている。昨年(2011)6月には、ミサイル駆逐艦など計11隻が宮古島北東約100キロメートルの海域を東シナ海から太平洋へ向けて南東進し、その後、沖ノ鳥島南西約450キロメートルの海域で、最大規模となる軍事演習を行なったことが確認されている。沖ノ鳥島海域が中国海軍の海と化すのも時間の問題だ。
今後、中国は海軍による沖ノ鳥島海域での軍事演習に留まらず、南沙諸島ミスチーフ礁にコンクリート施設を建設したのと同じ方法で、領有を主張してくる可能性すらある。
このままでは北方領土、竹島に続いて、沖ノ鳥島も同じ運命を辿ることになるかもしれない。民主党政権は、日本の領土・沖ノ鳥島を守るための防衛手段(自衛官の常駐など)を早急に講じるべきである。
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<プロフィール>
濱口 和久 (はまぐち かずひさ)
昭和43年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業。陸上自衛隊、舛添政治経済研究所、民主党本部幹事長室副部長、栃木市首席政策監などを経て、現在、テイケイ株式会社常務取締役、国際地政学研究所研究員、日本政策研究センター研究員、日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」キャスター、拓殖大学客員教授を務める。平成16年3月に竹島に本籍を移す。『思城居(おもしろい)』(東京コラボ)、『祖国を誇りに思う心』(ハーベスト出版)などの著書のほかに、安全保障、領土・領海問題、日本の城郭についての論文多数。 公式HPはコチラ。
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