ネットアイビーニュース

NET-IB NEWSネットアイビーニュース

サイト内検索


カテゴリで選ぶ
コンテンツで選ぶ
会社情報

SNSI中田安彦レポート

「日本のギリシャ化」を進める、民主党の増税一本槍政策(2)
SNSI中田安彦レポート
2012年2月 2日 16:00
SNSI研究員 中田 安彦 氏

<時間稼ぎにしかならない、現在のギリシャ支援>
 現在のユーロ危機も、日本の巨大震災への危機への備えについても、このような思考法で見ていかなければならない。

 現在、EU首脳の間では、ギリシャの債務危機の救済のパッケージについての議論が行なわれている。1月末現在で焦点になっているのは、3月20日に償還期限が来る145億ユーロのギリシャ国債の償還原資の手当ての問題である。この償還原資はEU、欧州中央銀行(ECB)、IMFのいわゆる「トロイカ」による、金額にして1,300億ユーロの支援パッケージによるギリシャの財政の安定化によってカバーされることになっている。
 ただし、そのための条件として、ECBや各国中央銀行が危機対応のために保有するのではなく、投資目的で保有されている全体(3,500億ユーロ)の6割(2,000億ユーロ)の金額を占める民間のギリシャ国債保有者(民間投資家)が、保有するギリシャ国債の額面の半額の損失を負担(元本の半額カット)しなければならない。民間債権者団体を代表する国際的な銀行家のロビー団体IIF(国際金融協会)というのがあって、この代表のチャールズ・ダラーラ専務理事が、民間債権者の代表として銀行家や年金基金らの意を汲んで、ギリシャ政府との債務減免交渉に臨んでいる。

bi.jpg もともと、ギリシャ国債の債務削減では、金融機関が自主的に国債の価値の21%カット案を受け入れていた。しかし、それでもギリシャの政府債務が減らないので結局、去年の10月暮れにカット率を大幅に引き上げることでEUと金融機関側が合意していた。このカット率でも、ギリシャの債務が減らない。ギリシャは、すでに受け入れた第一次支援、現在交渉中の第二次支援の条件として、大胆な緊縮財政政策を実行することを受け入れた。デフレ下での財政再建・緊縮財政は、景気をさらに悪化させる。したがって、削減すべき債務もふくれあがってしまうという悪循環に陥っている。

 現在の交渉では、その債務残高のGDP比を当初目標にしていた「2020年でGDP比120%」を実現するために、今度は元本カットの結果として旧国債との交換に発行される新国債の利回りを低くすることで、実質6割カットにするようにギリシャ側が求めている。なお、新国債は償還期限も超長期の30年債となることが合意されている。
 いったい、どこまで民間投資家が損を被る必要があるのかということで、ダラーラ専務理事も「いい加減レッドラインを決めてくれ」という怒りをあらわにしている。トロイカの一角を担うIMFも、「民間投資家だけではなく、残り4割のギリシャ国債を保有する、ECBや各国中央銀行も元本カットなどの損失を負担するべきではないか」と、ラガルド専務理事が要求するようになった。
 さらに、先週末から今週初めにかけて、欧州の重債務国支援に一貫して慎重な姿勢を取ってきたドイツが、「第二次支援を実行するのであれば、欧州委員会のなかにギリシャなど重債務国の予算編成権を持つ役職を設置すべきだ」と主張し始めた。これにはギリシャの財務省が大反発しており、年を越してようやくまとまりかけていた、民間債務者との債務減免交渉が再度、最後の欧州首脳会議でご破算になる可能性も浮上してきた。

 このように、ギリシャの債務危機は2009年10月に発覚して以来、何度も決着への合意を迎えると報道してきたが、結局は交渉がまとまらないということも繰り返しだ。この間、EU、ユーロ圏首脳会議など何十回も首脳陣が集まり会議を開いてきた。仮に、今回のギリシャ第2次支援がまとまっても、いずれギリシャの景気がさらに悪化することで債務返済の計画が狂い、結局は第三次支援に追い込まれるのではないかとも懸念されている。要するに、今のギリシャ支援は時間稼ぎにしかなっていないのだ。

(つづく)

≪ (1) | (3) ≫

<プロフィール>
中田 安彦 氏中田 安彦 (なかた やすひこ)
1976年、新潟県出身。早稲田大学社会科学部卒業後、大手新聞社で記者として勤務。現在は、副島国家戦略研究所(SNSI)で研究員として活動。主な研究テーマは、欧米企業・金融史、主な著書に「ジャパン・ハンドラーズ」「世界を動かす人脈」「プロパガンダ教本:こんなにチョろい大衆の騙し方」などがある。

*記事へのご意見はこちら


※記事へのご意見はこちら

SNSI中田安彦レポート一覧
SNSI中田安彦レポート
2012年7月12日 07:00
SNSI中田安彦レポート
2012年7月11日 07:00
SNSI中田安彦レポート
2012年7月10日 15:41
SNSI中田安彦レポート
2012年4月25日 07:00
SNSI中田安彦レポート
2012年4月24日 10:14
NET-IB NEWS メールマガジン 登録・解除
純広告用レクタングル

2012年流通特集号
純広告VT
純広告VT
純広告VT

IMPACT用レクタングル


MicroAdT用レクタングル