三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)など大手銀行5グループの第三四半期(2011年4~12月期)連結決算が出そろった。5メガバンクのうち、三井住友FG(▲20億円)とみずほFG(▲36億円)の2社が、国内の資金需要の低迷や法人課税の実効税率引き下げにともなう会計処理などの影響を受けて、最終減益となった。
三菱UFJFGは、米モルガン・スタンレーの優先株を普通株転換にともなう利益(2,906億円)が一時的に発生したことなどから、大幅増益を達成。5グループ合計の最終利益は、前年同期比2.7%増の1兆8,040億円となったが、そのうちの45%は三菱UFJFGによるもの。
りそなホールディングス(HD)は、取引企業の経営改善により貸倒引当金の一部が戻り益となったことなどから最終増益を確保。三井住友トラスト・ホールディングスは、昨春の住友信託銀行と中央三井トラスト・ホールディングスの経営統合にともなう「負ののれん代」が底上げの、特殊要因により最終増益だったが、実質的には17%の最終減益となる。
本業のもうけを示す実質業務純益では、株式市況の低迷や貸し出し金利の低下などで4行が減益を余儀なくされ、5グループ合計では0.4%減の2兆4,565億円となった。
三菱UFJは、国債など債券の運用益の増加に加え、アジアなど海外事業が収益を下支えしたことなどで、唯一増益を確保した。三井住友FGは、アジアでの支店開設を加速しており、国際展開のための経費増が重荷になった。みずほは市場部門の低迷と経費増が響いたものの、各行とも通期の業績予想は据え置いている。
ギリシャ危機を端緒として欧州債務危機で日本国債の保有リスクも意識され始めている。貸出金利の低下や不良債権化リスクもあり、三菱UFの保有する日本国債等の国内債券への投資額は50兆円に迫る勢いであり、メガバンクのみならず地銀などを含む国内金融機関はリスクウエイトがゼロの日本国債を大量に保有している。その日本国債残高は23年度末には668兆円と見込まれており、税収の16年分にあたる。
毎年約1兆円近く増加する社会保障費を賄うために、野田内閣は不退転の決意で消費税引き上げを打ち出してはいるが、実現までの道程は遠い。その間日本の財政赤字を賄うために、確実に国債残高は増加し続けることになり、国債価格の低下は保有株式の減損処理と同様に、損失要因に生まれ変わる。
かつての不良債権処理と違い日本国株式会社そのものが破綻することを意味する。国債保有は時限爆弾を抱えているようなもので、金融機関に与える影響は計り知れないものがある。
かつての金融危機以上の貸し渋りや企業倒産が多発することが予想されており、一刻も早く財政再建の道筋を示し、実行することが政府に求められている。
大手メガバンク(5行)グループの第三四半期(4~12月期)決算
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