部隊が分かれて進入したほうが発見されたときの原発側の対応が甘くなると判断し、1号機の北側と2号機の南西側から進入し、同時進行で破壊工作を試みることにした。ここまで発見はされていない。
今、本稿で取り上げているのはフィクションだが、実際の対策はどのようになされているのだろうか。ちなみに、海からの進入に対して備えはなされている「ことになっている」。九電への取材では、以下のように語られていた。
「保安上の理由から詳しく申し上げることはできませんが、海の中にいくつものセンサーを設けておりますし、海上保安庁とも連携がとれています。佐賀県警にも常駐してもらうようにしています」
まず、海中のセンサーについて。おそらく磁気センサーとソナー(スクリューなどの音を拾うマイクのようなもの。アクティブソナーというものもあるが、これは超音波を発して反射音を拾うもの)が設置されているのだろうが、付近は漁船が行き来しているし、イルカなどに反応はしないだろうから、人ならば容易に通過できると思われる。
次に海上保安庁。彼らの巡視艇が常に停泊していてくれればいいのだが、そういうわけにもいかないようだ。唐津に海上保安庁の第七管区海上保安庁の拠点があり、巡視艇も「まつうら」(335トン。20mm機関銃1門)があるが、担当海域は壱岐対馬を含んでいる。玄海原発だけを常に監視しているわけにはいかないし、陸に上がった後は管轄の外になる。うまく偽装できれば見つからずに進入は可能である。そうなると自衛隊が頼りの綱だが、もっとも近い海自の基地は佐世保だ。まさに今、ここで起こっている危機には対応できないだろう。陸自も最も近い駐屯地は福岡か久留米か目達原だろう。いずれも40~50キロの距離がある。こっそりと進入し占拠されたら対応できるのか不安がある。
最後は、常駐している佐賀県警だ。大変申し訳ないが、佐賀県警では訓練を積んだ決死の特殊工作員には対応しきれないだろうと思われる。ピストルの引き金を引くだけでも社会問題になる日本では即応は相当困難だろうし、できたとしても腰につけた拳銃では高い精度の射撃は難しいと思われるからだ(バレルが短く、軽いため制動が難しい。さらに銃床などもないためぶれが大きくなる)。加えて、マガジンに8発、筒の中に1発の計9発しか弾がない点も気にかかる。警官が武装した軍隊を相手にするには荷が勝つように感じる。
以上の理由から接近は可能であるし、それを許してしまえば、対応はできないだろうと思われるのである。核物質は地域を壊滅させる兵器にもなりうる。ならば自衛隊基地の中につくったり、米軍駐屯地に隣接してつくったりすればよかろうと思うのだが、どうやらそこに考えは至っていないようだ。もっとも、沖縄に原発がない事実を見ても米軍の考えが透けて見えるように感じられるが。
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